競売
検査部長に倉庫に移された6年前以降の解約睡眠口座を調べるように頼んだ。調査のポイントを詳しく添付した。こちらの報告はまだしていない。頭取が絡むとなると検査部長も頭から信用できない。ただ私が知る限り検査部長は頭取より7歳上でもう定年も近い。ここ3日間営業時間が終わると経理の女性とコンビを組んで金庫に籠って現金有り高が合わない調査を次長に言い渡された。
帰り道を歩きながら、
「べトナムかあ」
と呟いてまたぽろんの店のドアを押している。
今夜は私の定位置に若いネクタイをした男が掛けている。彼女は黙って小瓶とポールウインナーを置く。
「2度目の競売が終わり今回は1件入札が入りましたよ」
「これで決まったらどれくらいここで頑張れる?」
「相続放棄しているので立退きに対して金融屋と立退き費用を交渉しています。まとまらなかったら裁判と言う手もあります。粘って半年かなと」
弁護士はオムライスを食べ終わると何も飲まずに出ていく。
「こちらでないと落ち着かないでしょ?」
と言ってビールを移し替えてくれる。
「本気でベトナムに?」
「まだ半々。でも行くところがなくなるからね」
「ベトナムに行きたいな」
「私と絡んだら運をなくすよ」