プロローグ2 地方・暴動者側
「へぇ、帝都で生物テロだって」
手紙に視線を落としていた青年が、おもしろそうに
それに真っ先に、わかりやすく反応したのは
「生物兵器? すげぇ! 帝都ぶっ
「残念ながら、グリーン・バッジが先陣を切って
「オレのほうが絶対強いっすよー!」
「その手紙、例の『帝都にいる知り合い』からか?」
テーブルに人数分のコーヒーを置いてから、カズミが青年の手元の物を指差して問う。青年はにこりと優しげに笑った。
「そうだよ。たまにこうやって帝都の状況を教えてくれる」
「たまに俺らの逃亡やら
「そのうち紹介するよ。向こうにもいろいろあるから慎重にやらないと」
それにカズミは、とくになにを思ったわけでもない。隠し事をするのもされるのもここでは当たり前だったからだ。誰も彼も仲良しごっこで集まっているわけではないのだから、隠し事でムキになるわけがない。
「なんで内緒なんすかーーーー!」
ただ一人、真昼を
「俺、
不満を隠すこともなく口を
だけどその表情はそれだけではない。少しの
真昼はくるりと背を向けて、ブツブツ言いながらテーブルの上のコーヒーを手に取る。そのいじけた背中に青年が声をかけようとした。
が、その前に真昼が「ぐわあああぁぁぁぁ」と奇妙な声を出す。それからキッとカズミを睨《にら》んだ。
「カズさん! なんすかこのコーヒー! ほとんど牛乳じゃないすか!」
「お前のはカフェオレって何回言わせんだ。コーヒーと牛乳の割合2:8だろ?」
「最近は4:6っすよ!」
「結局ほとんど牛乳じゃねぇかオイ」
心底
不満なことだらけの日に、真昼はさらに機嫌を急降下させてカフェオレを飲み干した。
「真昼」
さらに丸まった背中を見兼ねて、青年がとびきり優しく真昼を呼ぶ。
声に導かれるように、真昼は青年へ振り返った。だがその顔はまだしかめっ面をしている。それにくすりと笑ってから青年が語り出す。
「今度の任務、真昼には重要なことを任せたいと思うのだけど、どう?」
「そうやってオレの機嫌を直そうって
「ノリノリじゃねぇか」
真昼はさっきまでの不満顔を綺麗さっぱり消していた。
真剣な
「ありがとう、真昼にしか頼めないんだ。もうすぐ国をあげた大イベントがあるからね。準備が必要だ」
「国をあげた大イベント? ってなんでしたっけ?」
「皇位継承権第一位、サクラ
「そんなん興味ねぇもん。オヒメサマなんてオレたちの最大の敵じゃないっすか!」
今度は、とたんに
生誕祭で盛り上がっているのは裕福層や、
「オヒメサマは豪華なドレスを着て踊って笑って、
最後に
「そのお姫様になにかあれば、国中が大パニックだろうね」
青年が静かに笑う。これからのことを考えて
「じゃぁ兄貴! ついに帝都に行くんすね!」
嬉しそうに、真昼が表情を輝かせた。
それを受けて、青年は
「荷物をまとめて、出発だ。
「やった! ずっと待ってたんすよこの時を! いよいよ帝都をぶっ潰すんすね!」
「ふふ」
笑いをこぼして、青年は椅子から立ち上がる。
コーヒーを持って窓辺へ立つ。そこから街を見渡した。薄暗く
立派な建物が並んでいるにも関わらず、明るい雰囲気など少しもない街。青年はそれらを優しげに見渡しながら、ぼそりと
「そういえばあの子、元気にしてるかな」
ふと、ある日の思い出が頭に
帝都の
「お前は今ごろ、どこにいるんだい? ちゃんと僕を
青年は歌うように声を
その独り言は、誰にも聞かれることはなかった。後ろでは真昼が「オレが皇帝とオヒメサマの首を取ってやるっす!」と意気込んでいる。