〈Regeneration 〉
その昔、俺たちの祖先といえる世界があったらしい。
文献を読むと、その世界には苦しみや恨み怒り、哀しみや妬み嫉みといった醜い感情があったと書いてある。
俺にはそれがどんなものなのか、よく分からない。他の人に聞いても、それは御伽話だと笑われた。
でも醜いと書いてあるからには、きっと良くないものなのだろう。醜いは美しいの反対だと書いてあったし。
……実のところ、その醜い、というものもどういう物なのかよく理解できていない。
俺たちがいる世界には、そんなものはもう無くなっていたから。
俺がいる世界は美しいもので溢れているから。
ーでもいつか、その苦しみとか怒りとか恨み哀しみ妬み嫉みといったものを体験してみたいと思った。
一体、どのようなものなのだろう。
その世界は、どんな世界だったのか。
ーー知りたいと思っていた。