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第一章第2話ああ…あの主人公俺氏、初めて精霊術師を実感ス

第一章第1話よりあらすじ

アトピーや負け犬人生に絶望して自ら命絶ちをした30歳非リア充の主人公。

色々あって異世界の神シンの世界にて
魔王を倒すという使命を背負わされた主人公は
唯一シンより授かった能力である
相棒精霊のハチと共に魔王の居城から1番遠い
辺境の森の中に転送された。

転送された森の中で主人公は
ハチから色々と説明を受け、
人の気配のする煙の上がる方向へと
歩き始めたのだった。

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第一章2話

アキノハラ…辺境の村にて候


ふぅ〜

はぁ〜


あ〜疲れた汗


シンに転送された場所から歩き出したエイタは
程なくして道端の大きな切り株をイス代わりにして座り込んでしまった。


「えぇ〜!?まだ歩き出して10分も経ってないんじゃ無い?
時計無いから分かんないけどさぁ…」

ハチが少し呆れた感じで頭の中に直接語りかけてくる。


俺はそれに対して答える。

俺はもう………心はまだ20歳だけど普段運動の類とか全然やってないからさぁ〜。

「心はハタチねぇ…」

てか精霊に疲れるとかあるの?

「ない。」

…フェアじゃねぇなら
そういう事言うなよ。

「それとこれとは話が別さ」

あ〜あ〜はいはいそうですか。


ん?

ここで遅れて俺の中にふと疑問が湧いてきた。

…さっきまでごく自然に会話してたけど、
ハタチとか10分とかって
この世界にもあるの?

それに対してハチは答える。


「あるよ。
いや、正確には文字や表現は違うけど概ね同じ意味の言葉や文字、表現があると言った方が正しいのかな?
それを私がエイタに分かるようにしてるって感じかな。」


う〜ん…

俺は分かったような分からない様なモヤモヤした感じだった。


「だからエイタはこの世界の人達との会話や文字の読み書きは元の世界と全く同じにして良いよ。
エイタの頭の中を読み取って
私が瞬時に自動翻訳するから。」

…ふ〜ん。

なんだかよく分からないが
とにかく元の世界の知識で会話や読み書きは大丈夫らしい。

ハチすげーな!!

「そうだろそうだろ。
もっと私を褒め称えるが良い。」

そういう風に言われると
何だか素直に褒めにくいな。

「こんな優秀な精霊は他にいないぞ!!」

ん〜まぁそこは他の精霊に逢うまで保留としておこう。

「ちぇっ」


そんなやり取りをしてる内に
体力も回復してきたので
俺はおもむろに腰を上げた。


さて…もう少し頑張ってみますか。
早く煙の元に辿り着かないとな。


そして俺とハチはまたジャングルチックな森の中を歩き出した。

…心なしか先程よりも足取りが軽い気がする。

そしてアトピーの痒みも今は感じない。

人間気の持ち様って大事だな。
もし今の状況で俺1人だったならきっと…

俺はハチに感謝しながら
煙を目指した。





………


それから程なくして
エイタとハチの眼前に
村らしき集落が見えてきた。


はぁ〜助かったぁ…
と素直に言いたい所だが
油断大敵だな。

何せ異世界、だからな…。

俺はここが未知の世界である事を忘れてはいない。

そうだ、ハチはここが何処だか
分かるか?

そうハチに問いかけたが

「ゴメン残念ながらここどころかこの世界の事は最低限しか分からない。」

ハチは申し訳無さそうに答えた。


そうか…

あくまでも自分で頑張れ、
という事か…。

俺は少しため息をつきながら
さてこれからどうしたものか?と考えていた。


…もしここの住民が俺たちを襲ってきたとしたら
俺はどうすれば良い?

戦う?
逃げる?
それとも…


なぁハチはどう思う?

ハチは答える。

「うーん相手の事が全然分からないからねぇ…
てかエイタはそれ以前に自分の事が分かっているのかい?」


…確かに。

確かシン様は俺のスペックは
命絶ちをした時のままだと
言ってたと思うけど…

であれば戦闘も逃走も
ムリゲーだな。

あとは相手が友好的であるのを
ただただ祈るしかない、か?

そんな事を考えていると

「エイタはシン様から
この超優秀な相棒精霊である私を授かってるじゃないか!!
私は戦闘も逃走もお手の物だよ。」

ハチが自信満々に答える。

そうなのか?
でも俺はどうやれば良いか分かんないんだけど?

ハチがすぐさま応える

「願えば良いんだよ。
具体的にこうなって欲しい!!
って感じで強く念じる。
シン様が言ってた事を思い出してよ。」

……

シン様が言ってた事…アレか?

記憶力も残念な俺は
足りない頭を振り絞って
あの時の記憶を呼び戻していた。



「大丈夫だエイタよ。
この世界で1番重要な要素は
強い想い…執念の力だ。

執念こそが強さに繋がる。

この世界の我が子等にはそれがあまり無い。
何せずーっと平和だったからなぁ…」

「それに三者共存出来る様に競争心とか欲望とかを出来るだけ抑える様に創造したからな。」


「だが異世界の者である
エイタ…お前は違うであろう?
忘れるな…
この世界では想いの力が他の全てに勝る事を。」



……


思い出してきた。
けど具体的にどうすれば良いのか?
サッパリ分からん。


するとハチが半ば呆れ気味に

「だ・か・ら私に向かって
こうなって欲しい!!って強く願えばそれだけで良いんだよってば!!」

と言った。


ナルホド…わからん。

これが本当の気持ちだったが、
これ以上聞くのもめんどくさそうなので
俺は取り敢えず納得理解した事にした。

わかったよ。
じゃあ頼むぜハチ!!

「任せてよ」

そんな訳で俺はよく分からんまま
村に向かおうとした…が止めた。


「どうしたんだい?
何で村に向かわないの?」

ハチが問いかけてくる。


いや…さっきハチが言ってくれた
願うだけ、
ってのを試してみたくてさ。

俺がそう言うと

「エイタって慎重なのか小心なのか又はどっちもなのか…
ま、それで納得するなら良いんじゃない。」

ハチはそう言った。


よし、そうとなったら。

俺は村から死角になりそうな所を選んで
高い木の上に実っているヤシの実みたいな果実に向かって願った。

⁑木の実よ落ちよ⁑

すると何と!!




………


…何も起きなかった。




…。

ハチこれは一体どゆこと?


ハチは答える。


「言い忘れてたけど、
この世界では願うだけではダメ
なんだ。」


「声の大きさも重要なんだ!!」


声の大きさ…
それってまさか………

俺は動揺していた。


「そう、この世界の精霊術や魔法の類は術者の声の届いた範囲にしか効果が及ばないんだ。」

ひいいいぃぃぃぃぃ…

1番イヤな予感が的中した俺は
何とも情けない声を出して
頭を抱えていた。


ああ…
よりによって何でそうなる?

シン様はドSの嫌がらせ大好き人間…あ、いや神様か!?


そぅ…非リア充の俺にとって
大きな声を出すというのは
それだけで拷問や罰ゲームの類に値するのであった。


「んふふ…」

ハチが変な声を出しながら微妙な表情でこちらを観ている。


…何だよ。

俺はハチが何故そんな態度を取っているのかがわからなかった。


相変わらずハチはニヤニヤしながら言ってきた。

「エイタったらカッコつけちゃって。
本当は術名や技名なんかを叫びながら出したいタイプのクセに。」

んなっ!!!

俺は動揺した。


「シン様がエイタが召喚されたのは誰よりもそういうのを強く望んでいたからって仰ったじゃないか!!」


…。

そうですね、はい。

もう隠し事してもしょうがない。

てかハナから隠せてもないけど。


「エイタの元いた世界にも
コトダマの力ってあったんだろ?
ならこの世界にあっても
不思議じゃないさ。」

ハチが続ける

「正直声さえ届けば術の効果は及ぶけど、
適当な事とか言ってもイメージがちゃんと出来なくて失敗しやすいと思うよ。」

「だから恥ずかしがらずに大きな声で術名や技名を叫ぶんだ!!
元の世界にも術とか魔法の類は
あったんだろ?」


…いや術とか魔法なんてリアルに無かったし。

俺は妙に冷めた感情で答えていた。


「さあ今こそエイタが心の底から願っていた事を実現させるんだ!!」


…。


ああもうどうなってもいいや!!

俺が覚悟を決めて大声で術名を叫ぼうとした時だった。


「あ、対象に向かって分かりやすく自分の手とかを向けた方がイメージし易くて成功しやすいよ。」

とハチ。


うがあああぁぁぁアアア!!!!

激しく頭を掻きむしった後俺は
ハチに言われた通りに
木の実に向かって右手を向けて
効果をイメージしながら叫んだ。

⁑ウインドタッ…タッカー!!⁑

!?しまった!!

術名を叫んで直ぐに術名間違えた事に気付いたが遅かった。

はっっっ…ハズい。

俺は1人で赤面していた。


だがそれでも俺の身体の中から
不思議な力が溢れ出て
自分の右手を通して対象に向けて
放たれたのは感じ取れた。

そして木の実とその周辺に真空の刃の様な物が放たれ、
肝心の木の実を真っ二つにしていたのだった。


…。

スゴイ…けど木の実は半分しか落ちてこなかったな。
イメージと違う…。


「ま、最初にしては上出来じゃない?」

俺の中のハチがノリノリで語りかける。

あれ?さっきまでハチそこに居たのにいつのまに俺の中に?

ハチが笑って答える。

「エイタがウインドタッカー唱えようとした時」

…ウインドタッカー言うなし。

俺は少しだけムッとして答えた。

「基本的に精霊術はその精霊が術者の体内に居ないと発動出来ない。」

ハチの答えに俺はナルホドと納得した。

「各精霊には分野によって得意不得意があるからね。
因みに私は得意も不得意も少ない
広く浅くタイプかな。
あ、サポート能力は高いかも。」

ハチの言葉を聞いて
俺の頭の中には器用貧乏という
言葉が浮かんでいた。


「さて、それじゃあいい加減先に進もうよエイタ。
こんなペースじゃいつまでたっても先に進まない。
それに飽きられちゃうよ。」

ハチはそう言いながら
俺の中から出てきて
芝犬そのものの姿で
俺を見つめていた。


…飽きられるってのが良く分からんが?

ハチに聞いてみたが

「まあそれは気にしない気にしない。
強いて言うならお約束ってとこかな。
そんな事よりほら先に進もう。」

ハチに急かされた俺は
もう深く考えない様にした。

そうだな先に進もう。

そう思った瞬間だった。



「貴方は精霊術師様ではありませんか?」

!?

声のした方に振り返ると
如何にも村人Aという感じの
少し歳上に見える男性が立っていた。

あの…貴方は?

俺は村人Aに向けて問いかけた。


「申し遅れました。
自分はすぐ近くにある集落
アキノハラに住む
ヒロと申します。」

先程の術と私には見えませんが、
明らかに精霊様と会話をなさっている御様子からして
精霊術師様では無いかと思ったのですが…

ヒロと名乗る村人Aな男性は
少し自信なさげにそう言った。


まあ…精霊術師には違いないですよ。
なりたてで自分でもまだよくわかってないですけどね…色々。

俺も釣られて自信なさげに答える。


おおッッ!!
本当に精霊術師様だとは…
スゴイ!!!!

自分精霊術師様とお会いするのは
生まれて初めてですッッ!!

ヒロは興奮しながら話している。


…精霊術師って本当にレアなんだな。
シン様がオリンピック出場選手位レアだって言ってたもんな。

…ま、オリンピック出場選手なら
確かにピンキリだから
言い得て妙だな…

そんな事を思っていると

「精霊術師様!!
どうか我が集落アキノハラに
お越し下さい。
この様な所ゆえ大したおもてなしは出来ないかもしれませんが、
集落の仲間達もさぞや喜ぶと思いますので。」

ヒロが熱く誘ってくれていた。


だが俺は素直ではないし
良い性格もしてない訳で…

う〜んどうするかな…
捻くれた見方をすると
エイタという人間よりも

精霊術師

という所しか観てない様にも
感じられるが…

そんな事を考えているとハチが

「良いんじゃない?
どうせ村に行きたいと思ってたんだから丁度いいじゃない!!」

ま、確かにな。

俺もその意見には賛成だ。


…だが少しだけ引っかかるんだよな………

何かが…。

ま、何かあったら精霊術師の能力でどうにかすれば良いか!!

慎重な筈なのに
ある程度の基準を超えて
めんどくさくなってくると
途端に思考を停止して為すがままになる、
という前世からの悪癖が出てるのを実感しながら
俺もハチの意見に同調した。


分かりました。
せっかくのお誘いですし
貴方の集落に案内して下さい。

ヒロは子供の様な無邪気な笑顔とトーンで返答した。


「喜んで!!」

その様子を見聞きした俺は
違和感を感じた自分の性格の悪さを改めて痛感しつつ
ヒロに続いてアキノハラへと
向かうのであった…

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第一章第2話後書きです。

観て下さるあなた様に
いつも感謝しております。

令和元年より小説書き始めました
リアル妄想系fantasista と申します。


本当の事を言うと
もっと早く投稿するつもりでしたし
第2話では辺境の村 アキノハラ の内容に
もっと入って行く予定でしたが
物語の中のルールの説明?が長くなり
結果的に2話では村の内容には入れませんでした。

ちょっとテンポが悪過ぎるかな?と
作者自身が思っております。
次の話からはテンポを早めて行きたいと
考えています。

稚拙な文章でご迷惑おかけしているかもしれませんが、
リアルが忙しく大変な中でも
死ぬ気で頑張って活きますので
応援の方、どうぞ宜しくお願い致します。

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