04 現代の君へ・1
「こちら凄惨な事件があった枚方市都ヶ丘現場付近です。
現場では被害者である水野彼方さんを惜しむ声と時折りすすり泣く声が聞こえます」
テレビのアナウンスで、小さく映し出される。
それだけで動揺し涙を流す深雪の姿を彼方の双子の弟である誠が歯を食いしばる。
テレビでは、そんなに交友のなかったクラスメイトが彼方のことを「いいヤツだった」と言って涙を流していた。
それを見た誠は思う。
友達とはなんだろう?
死とはなんだろう?
ナイフで刺され出血多量で死ぬ。
そして、それを見た深雪の苦しみ。
なにをどうしたらこんなに人生は転げ落ちる?
誠には何もわからなかった。
ただ虚しさと悲しみだけが残った。
彼方が死んで一週間を過ぎようとしていた。
でも、悲しみは消えない。
テレビもネットも彼方のニュースで溢れ出いた。
犯人はまだ見つかっていない。
「怖い怖い怖い怖い」
深雪の発作がはじまった。
「大丈夫よ、深雪ちゃん」
彼方の幼馴染で恋人である湊が深雪の体を抱きしめる。
「怖いよ怖いよ湊お姉ちゃん。
私、6円にされちゃう」
事情がわからない誠には意味不明だった。
だが深雪の話を落ち着いて聞けばわかる内容だった。
彼方は、犯人の妄想の6円のために殺された。
たった6円、しかも妄想の6円のために。
誠の怒りは頂点に達していた。
犯人を見つけて自分が殺す。
そうしないと深雪の恐怖が消えないと考えたからだ。
死んだら終わり。
それ以上の被害者は出ない。
だから殺す。
それが深雪の幸せの近道なんだ。
すすり泣く湊と声を出して泣く深雪。
母はショックで倒れ父は仕事に向かった。
父は優秀な刑事。
必死で情報を集めている。
だが集まらない。
息子が被害者であるため、父である雅治も捜査ができない。
警察をやめて捜査すると思ったが残された家族のため警察に残ることを決めた。
一瞬にして全てが変わった。
朝、一緒に学校に向かい。
帰りは自分が深雪と一緒に帰る番だったのに誠は面倒くさがり彼方に任せた。
自分のせいで彼方が死んだ。
誰も責めてくれない。
それが何よりもつらかった。