第5話
私の名前は大月京子。
人は私の事を美少女霊能者と呼ぶけれど。
あまり好きじゃない。
「実力が無いみたいじゃないのさ!」
でも私の事を知る者は実力も伴っていることは既存である。
そう、私は若手ナンバーワン。
若手じゃなくてもナンバーワンの自信はあるけど。
ベテランと競い合う機会はめったに無いし。
仮にベテランが失敗した除霊に私が成功したとしても。
時期が良かったとか、ベテランの除霊効果か効いてきた時にタイミングが重なっただけとか言われて。
なかなか全ての中でナンバーワンとは認められないのよね。
でも、そんなベテランよりも敵意している相手がいる。
そいつはしょーもないミスから植物人間として戦線を退いた。
そいつが現れるまでは私がナンバーワンで去った後もナンバーワン。
「勝ち逃げすんじゃないわよ!」
そしてある日病院から電話がかかってきた。
「はい!」
「大月ですが!」
「こちらは青山総合病院ですが!」
「城戸さんの意識が回復しました!」
あいつが目覚めた。
というか、どうなっているのよこの病院は?
守秘義務、コンプライアンス、プライバシーの侵害。
病院は家族以外に個人情報を教えることは無い。
親しい間柄の友人はもとより。
恋人であっても同じことである。
たとえ恋人であっても籍を入れてなければ法的には他人である。
「まあ、解らないでも無いけど!」
身寄りのない訳ありの患者に甲斐甲斐しく世話する娘。
恋人と思われても仕方がない。
そもそも、霊能者協会がらみの関係者と思われているわけだから。
世間一般のルールはこの際関係ない。
それでもベテランは多少の躊躇があるらしく。
かけてきたのは若い看護師だった。
もしかしたら進んでかけたかった可能性もあるけど。
「あの人は完全に恋人だと思い込んでいるわね!」
「あの!」
「おめでとうございます!」
「私感動しました!」
「先生からは回復の見込みはほぼ無いと言われていたので!」
「私だったらとても耐えられない!」
「でも、きっと解かっていたんですね!」
「いつの日かこの日が来るのを!」
「これからはきっと大丈夫ですから!」
「お幸せに!」
真実としては霊士と京子は恋仲では無かったが。
京子はあえて否定はしなかった。
かってに美談にされてはいたが危険と隣合わせのこの業界。
めったに無い明るいニュースなのだから。
美談になり、大いに感動されても悪い気はしなかった。
「でも、それはそれ!」
「首を洗って待っておいでなさいね!」