エピローグ…或いは蛇足
漁をする小さな船。
漁師の親子が、仕掛けた網を引いている。少年が引き上げた網の中にきらりと光るものを見つけた。好奇心に駆られ手に取ってみるとそれは小さな小瓶。
どうやら中に紙が入っている。
少年は、きっと誰かが出した手紙かなと、ロマンチックな気持ちになり瓶のふたを開け取り出してみた。
所々、彼には難しく、よくわからなかったが中に書かれていたのは……。
『
毒殺 少年
撲殺 外科医
絞殺 女
磔殺 カメラマン
電殺 青年
刺殺 執事
斬殺 老婆
擲殺 マジシャン
銃殺 メイド
消滅 ホスト
自殺 探偵
あの島で起きた本当のことを、まだ君は知らない。
勝利者は誰か。
…………
…………
怪盗キマイラ。
』
手紙を手に持ちながら、水平線の彼方にわずかに見える孤島に目が行く。
しばらく少年が、いろいろ思いを馳せながらボーっとしていると、父親にどやされた。
「おい、何してる。手が止まってるぞ」
「怪盗って何? 父さん」
「はぁ? 何の話だ?」
少年の手元を見て。
「そんなくだらんもんに、気ぃ取られていると大事なものを盗まれるぞ! 銭を稼ぐ貴重な時間をな!」
彼はその言葉に軽く頷くと、手紙を丸めて瓶に戻した。
もう一度しっかりとふたを閉めて。
力いっぱい思いっきり遠くへ投げる。
小瓶は大海原の波にのまれ、すぐに見えなくなる。
やがてそれ自体では浮かぶこともできず、深い深い海に沈んでいく。
深く深く暗く。もう誰も目にすることはない。
ー終わりー