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20、さて、そろそろ俺ももっとカッコイイところ見せますかね。

「皆! ここは俺に任せて行くんだ!」
『いや今ここ安全だからな?』

 武器を取り返した俺達へ大真面目に叫ぶきのこの集団。
 ……うん、まぁ良いよもう。相手にする時間も惜しいわ。

「まぁ、実際襲撃があいつらだけとは限らないしな」
「村長様……」
「大丈夫だ! お前達は俺が守るからな!」
「彼女達をお願いします」

 え? あれ? 呆れたのは俺だけ? バルトヴィーノもエミーリオも当たり前のように頭を下げて幼女達をきのこに預けている。
 きのこは不安そうな幼女達に元気よく笑いかけると、彼女たちの手前に巨大な穴を魔法で作り出した。こいつ、最初はあんなに戦うの嫌がっていたのに。やっぱり相当土魔法スキル高いんじゃなかろうか……。

 穴は階段状に奥まで続き、さらに所々光の球が浮かんでいて部屋のようになっている。その中にきのこの何体かと幼女達が入ると、残ったきのこがまた魔法で蓋をしてしまった。
 畑だったこともあり、一度掘り返したなんてわからないような仕上げだ。これならちょっとやそっとじゃ見つからないだろう。



「ベルナルド!」
「皆……! 間に合って良かった!」

 大急ぎでベルナルド先生の元に駆け付けると、蛇が竜巻を無理矢理突き破ろうとしている所だった。
 バルトヴィーノの声を聞きつけてホッとした笑顔で振り返った瞬間、とうとう風の檻は破られた。

「危ない!」

 ドナートが叫ぶ。
 刹那、ガキン、と金属質な音が響いた。
 ベルナルド先生に襲い掛かる蛇に向かい、チェーザーレが咄嗟に大楯を投げつけたのだ。その盾がギリギリの所で蛇から先生を守ったのだった。
 チェーザーレの身長ほどもある巨大な盾が宙を飛ぶなんて信じられない光景に唖然としてしまった。

「大丈夫か?」
「あぁ。助かったよ」

 バルトヴィーノが剣を構えてベルナルド先生と蛇の間に立つ。
 鼻先を潰されのたうち回る蛇の隙をついてチェーザーレが盾を拾い、やはりベルナルド先生の前に立った。
 アルベルトは家の中で勇者達と対峙しているためいないが、その代わりを務めようとエミーリオも前に出る。
 いつもの戦闘陣形がこれで整ったわけだ。

「リージェ、あいつらの動きを止められるか?」
『任された』

 ベルナルド先生がもう一度魔法を練る時間を稼いでくれと俺に指示してきた。
 足止めするなら俺が攻め続ければ良い。そう思って空中に飛び上がると、悶絶していた蛇がゆらりと体を起こす。
 恐らく先生の竜巻から脱出するために力を欲したのだろう。欠片は完全に取り込まれたようで、斑に入っていた青銀色は消え、全身が漆黒に染まり巨大化している。
 見るからにパワーアップした蛇は、完全にブチ切れたのかこちらに向かって大口を開け、シャーッと威嚇してきた。

「死にたい奴だけかかってこい! この俺様が遊んでやろう!」

 挑発スキルを発動した瞬間、一頭が俺に文字通り飛びかかってきた。凄い速さのそれを間一髪で躱す。勿論爪を立てるのを忘れない。スキルを発動していなかったが、かすり傷くらいはつけられたようだ。
 横から薙ぎ払うように飛んでくるもう一頭の尻尾をチェーザーレが盾で食い止める。
 その隙をついてバルトヴィーノとエミーリオが斬りかかり、ドナートが矢を射かける。


 ギャアァアッ!


 鼓膜をつんざくような大声で、怒りとも悲鳴ともつかぬ鳴き声を上げる竜。
 エミーリオとドナートの攻撃は弾かれたようだが、バルトヴィーノの攻撃は通ったようだ。
 横一線に走った浅い傷から血を流しながら、それでも挑発スキルに中てられているのか俺への攻撃をやめない二頭。さて、そろそろ俺ももっとカッコイイところ見せますかね。

「血飛沫と共に踊れ!!」

 何となくだが、最近使いまくっていたウォーターカッターは効かない気がした。水辺の生き物って鑑定結果だったし、かえって元気になっちゃうんじゃないかって。
 斬撃を飛ばすと、俺に向けて開けた大口の中に吸い込まれるように入っていった。すばしっこくても、俺の挑発に中てられて頭に血が上った状態じゃ避ける気も起きなかったらしい。
 そのまま口の中をズタズタに裂かれた一頭がびったんびったんとのたうち回る。

「うわっ!」

 見境なく振り回される蛇の長い体を剣で逸らしていたエミーリオが耐え切れずに吹き飛ばされていった。視界の端で見て致命傷ではなさそうだと判断。ルシアちゃんが駆け寄ってたから任せよう。
 ええと、動きを止めるにはもう少し弱らせないとだよな?
 チラ、とベルナルド先生を見るとロッドを蛇に向けまだ何やらブツブツと唱えていた。うん、まだかかりそうだ。

 と、よそ見をしていた俺にもう一頭が迫ってきていた。
 その素早いタックルを間一髪で避ける。と、狙っていたかのように今度は尻尾が上から叩きつけられた。
 地面を転がるようにギリギリでこれも躱すと、今度は前足の爪が迫る。

「おいおい、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 流石に避けられないかな、と他人事のように思ったその爪をバルトヴィーノの剣が防いだ。ナイスだ!
 それにしても、こいつらなかなか弱らないのな。ん? 待てよ? 水辺の生き物ってことは、乾燥に弱いんじゃね?
 閃いた俺は腹いっぱいに空気を吸い込むと、バルトヴィーノに避けるよう合図を送る。

「我が劫火に焼かれよ!」
「あっ、バカ!」

 二頭の蛇に向かって全力でブレスを吐く。
 炎が蛇を包み込むのと、俺に向かって焦ったようなドナートの声が聞こえたのはほぼ同時だった。

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