王妃様が来ました
トーマス様が来られた次の日、今度は王家の紋章が入った馬車がやって来た。
正直、誰が来るのか身構えていたのだが扉が思いっきり開いて飛び出してきた相手にいきなり抱きつかれた。
「キャロちゃ~ん!! 会いたかったわよぉ!!」
「お、王妃様、く、苦しいです……。」
えぇ、王妃様でした。
王妃様、『エメレル・シュートハルト』様は私が王太子様の婚約者に選ばれてから影ながら私を支えてくれた方だ。
ご自身も王妃教育で苦労していた事もあり相談相手になってくれたり愚痴を聞いてくれたりとかしてくれた。
また、たまに王妃様の仕事の一環として修道院や孤児院の視察に行ったりとか色々外に連れ出してくれたりもしていた。
正直、家族よりも信頼できる方だ。
「うちのバカ息子が本当にごめんなさいね。キャロちゃんをお嫁さんにするのを楽しみにしていたのに。」
「こちらこそ、うちの家族が申し訳ありません。」
「キャロちゃんは心配しなくてもいいのよ。あの家族にはバカ息子と一緒に締めるつもりだから。」
ニッコリとそう宣言したのがちょっと怖かった。
「それで、此処が問題の修道院ね。うちの方で調べさせたんだけど、『閉鎖申請』が出てなくて現地調査もされてなかったみたいなのよ。だから、『名義』だけはリストに上がっていて支援金も出ていたみたい。うちの管理もズボラだったのよ。」
私はトーマス様から聞いた話をエメレル様にお話しした。
「今度のハニスター公爵は評判が良いのは聞いているわ。彼が誠実な態度を取るのであれば国としては大きな罰を与えるつもりは無いわ。」
私はちょっとホッとした。
「これを期に修道院や孤児院の大規模な調査をやらせる事にしたわ。ひどい目に遭っても国の事を考えてくれるのは流石はキャロちゃんね。」
「いえ、私は私の事を考えての行動ですから。……あの、ミレイアと王太子様はどうしているんでしょうか?」
「まぁ、本音を言うと私も国王も彼女は王妃には向いていないし、バカ息子は廃嫡にするつもりよ。悪いけどカトリーゼ公爵家は近日中に『取り潰し』になる予定よ。」
「本当ですか……。」
「別にキャロちゃんが悪い訳じゃないのよ。キャロちゃんが王太子妃になったと同時にカトリーゼ家とは縁を切らせる予定だったし。あの家は余りにも人道的に貴族としてふさわしくないのよ。」
まぁ、あの人達は自分の事が一番大事で他人を平気で切り捨てるからなぁ。
しかも罪悪感なんて全く無いし、それも私の評判が悪い要因の一つでもある。
「キャロちゃんは自分のやりたい事をしなさい。後始末は私に任せなさい。」
そう言ってエメレル様はニッコリ笑った。