波乱しかないスタート・・・・・・
「はぁはぁ・・・・・・」
荷物が入ったバッグを持ちながら私は坂道を登っている。
「どうせだったら建物まで送ってくれれば良いじゃない・・・・・・。何が『此処からは修道院の敷地内で我々は入れない』よ・・・・・・。そんなに私と関わりたくないのかしら。」
ブツブツ文句を言いながらも私は緩い坂道を歩いている。
つい最近まで私『キャロル・カトリーゼ』は、この国で公爵令嬢として、王太子の婚約者として優雅に生活していた。
が、全部妹に持っていかれた。
婚約者も家族も全部だ。
妹の『ミレイア・カトリーゼ』は、私と違って世渡り上手でコミュニケーション能力が高い。
私はどっちかと言うと真面目なタイプで同じ親から生まれたとは思えないぐらい正反対な姉妹である。
ミレイアは何故か私の事を小馬鹿にしてくる。
私は基本的に相手にはしていなかったのだが私が王太子の婚約者になった時から敵対心を持つようになり私の悪い噂を言い触らしたり婚約者に近づいたりするようになった。
ミレイアは『姉に苛められる可哀想な妹』を見事に演じて私が気がついた時は私の味方は誰もいなかった。
いつの間にか私は『悪役』になっていたのだ。
そして、王太子の誕生日パーティーの席にて私は婚約破棄を言い渡されミレイアが婚約者になった。
そして、一方的な断罪を受けた私は『リーズハルト修道院』に送られる事になった。
その場で反論したかったのだが反論する余裕も無く私は会場を追い出され、両親から勘当を言い渡され荷物と一緒に馬車に放り込まれて途中の道で馬車からも追い出され現在にいたる。
正直に言うと『もう、どうでもいい』が本音だ。
何かもう疲れちゃって修道院ライフも良いかな、なんて思ってしまった。
そんな事を考えながら歩き続けて数時間、漸く修道院らしき建物が見えてきた。
「漸く見えてきたわ・・・・・・。」
しかし、何か違和感を感じた。
建物は修道院らしく立派だけど人の気配を感じない。
普通は誰か出迎えが来る筈なんだけど誰も来ない。
建物に近づくにつれて私の嫌な予感は核心的な物になった。
「此処、廃墟じゃない・・・・・・。」
壁はボロボロで穴だらけ、窓ガラスも割られたままの放置状態。
入口の扉も無く、覗いて見れば床は腐っていて踏み入れたら落ちそう。
今にも倒壊しそうな建物が立っていた。
ただ入口にはこれまたボロボロの看板で『リーズハルト修道院』と書かれていた。
どうやら此処で間違いないみたいだけど・・・・・・。
「どうやって生活するのよ・・・・・・、私に野垂れ死ね、て言いたいの?」
この瞬間、元家族、元婚約者、噂を信じた貴族どもは『敵』と認定した。