決別
話はいつの間にか終わっていた。
そして、それぞれ席を立ち店を出る。
「じゃあ。サファ」
そう言ったのはリィーグル。
「えっ?」
私には何がなんだか分からなかった。
「ええ、それでは・・・」
それに答えるイファ・・・。
もっと一緒にいたい。
せめてもう少し。
少しでいいから、リィーグルと一緒に・・・
クルリと背を向け行ってしまおうとするリィーグル。
イファが私の手を掴もうとする。
私はそれを無意識に払いのけた。
視線はリィーグルだけを見つめている。
待って。
行かないで。
置いてかないで。
「リィーグル!!!」
叫び声で道行く人が振り返る。
リィーグルも。
私は駆け出していた。
「ディメル?」
私を抱きしめてくれる。
「行かないで。独りにしないで」
私は泣きながらリィーグルにしがみつく。
彼はなだめるように頭を撫でる。
「大丈夫だよ。ディメル」
それでも、私はしがみついたまま叫んだ。
「いや。このまま、別れるのはイヤ!!」
いやだ。リィーグルと一緒にいたい。
ずっと・・・。
「しょうがないですね。明日、サファを引き取りに行きます」
後ろから、イファの声が聞こえた。
「そうしてください」
リィーグルが困ったように答えていた。
私は嬉しかった。
まだ、リィーグルと一緒にいられる。
その事が嬉しかった。
それに――
「さあ、帰ろうか」
何事も無かったかのように車のドアをあける。
「うん」
そうして車に乗り込み、森の中へ。
また、あの場所に戻る。
リィーグルの家へ。
カタカタと揺れる車内。
ここちよい振動が伝わってくる。
《何も知らないあの頃なら》
声が・・・。
また聞こえる。
うとうととした頭の中で
《ごめんなさい》
響く・・・・・・
響く・・・。
何を?なぜ?謝るの?
《幸せに》
ダレ?
《どうかあの頃のように》
重く響く響く声。
闇と不安と安らぎと
――――。