酸素中毒
酸素中毒
主婦 高橋美和子は帰ってくる息子の誕生日の料理を調理をしながら韓国ドラマを見ていた。
「そろそろかな、あ~またうるさいのが帰ってくるのか~あっ雄治からラインだ、えっ?今日会社の送別会で遅くなるって、チッそんな事もっと早くいってよ~夕食どうするのっと、送信とっ」
美和子は多少イラつきながら、夫のLINEに怒りマークと共にメッセージを返していたその時、電話が鳴った。
「あっ電話だ、いいやちょっと料理ここのところだけ急がなきゃなんないんだよね」
しばらくすると電話は切れたが再度鳴り続けた。
「しょうがないな~誰だよ、はい、高橋です」
美和子は苛立たしさを露に表情に出しながらリビングに置いてある電話をオンフックにして出た。
「高橋さんですか、私中央小学校で丈裕くんの担任をしている吉中といいます」
「ああ~いつもお世話になってます」
「実は息子さんが、運動場で倒れ病院に運ばれたので、直ぐに市立病院に向かって頂けますか」
「病院って、何があったんですか!丈裕は無事なんですか!」
「詳しいことは分からないんです、私達も直ぐに向かいますので、お願いします」
どう言う事?とにかく急がなくちゃ!
病院に到着すると美和子は自分の子供と同じクラスの同級生の父母が10人以上いる事に呆然と立ち尽くしてしまった。
しばらくすると、医師が数人現れ、その内の一人が説明を始めた。
「私今回治療の責任者であります。吉岡です。現在治療は鋭意継続中です。今回のお子様が倒れた理由は特定されていませんが 直接的な原因としましては、急激な血糖値の上昇によるものと考えられております」
フロアにいる 親達は 一瞬言葉を失った。
「つまり糖尿病だって事ですか?」
美和子の隣にいた母親らしき人が目を真っ赤にして聞いた。美和子の顔は普段血色の良さが失われ、蒼白となっていた。
「お子さんは以前医師に糖尿病を指摘されたことはありますか?」
「いえ、この前健康診断も問題無かったんですが、どうして」
「今子供はどこなんですか?」
「お子さんのお名前は?」
「哲人です、小池哲人です」
その名前を聞いた医師の顔が曇った。その場にいた父母達は何か死刑判決を受けたかのように、何も言葉が出なくなってしまっていた。
どうぞ此方へと言われた両親はエレベーターに乗り込み何処かへ行ってしまった。
数分すると、遠くから先ほどの両親の嗚咽が聞こえてきた。
「わあああああああああああああ!!!!哲人!哲人!どうした!起きろ!!パパだぞ!哲人!!」
一層雰囲気が緊迫したものとなった、その後美和子を含め父兄達0は2つに分けられ それぞれの病室に向かった。美和子の息子丈裕はベッドに横たえられていたが意識は無い状態だった。
「現在血糖値を下げる為インシュリンを使っていますが 数値が952です。かなり芳しくない状態です」
「先生、丈裕は大丈夫なんでしょうか?」
「お母さん、私は医師として全力を出すことをお約束します、丈裕くんも頑張っているんで、お母さんも気をしっかり持って頑張ってください」
吉岡医師は表情は冷静を保っていたが、ある種の緊張感がその強い精神力を揺るがしているのを自覚していた。
血糖値ばかりでなく、血中酸素濃度まで異常に上昇している。どうして酸素中毒の症状まで出ているんだ、どういうことだ?
吉岡医師は病室を出ると、スマホを取り出し出身校の医学博士の元へ電話を掛けた。