第32話:モフりたい
朝。よく眠って昨日の疲れもしっかり取れた俺は朝食を摂ってからローズ先生の授業を受けに行った。
「シズナ様、おはようございます」
「ローズ先生、おはようございます」
何気ない普通の先生と生徒の会話を交わして授業が始まる。ただ一つ、違う点は生徒に向かって『様』を付けているところだ。こればかりは俺が貴族の子息だから仕方ないらしい。
「では早速ですが、今日は人種について勉強します。まずこの世界には大まかに分けて6種類の人種がいます」
「一つ目は私達のような『人間族』。人間種は大して得意なこともない平凡な種族ですが‥‥‥兎に角数が多いのが特徴ですね。
二つ目は『獣人族』。動物のような見た目や特徴を持った種族です。特に匂いを嗅ぎ分ける嗅覚や高い身体能力が優れています。
三つ目は『魔人族』。古くは『魔族』とも呼ばれていました。見た目が『人間族』や『獣人族』とも違い、強大な力を持った個体が多い種族です。ただ強大な力を持つが故に数が少なく寿命も長いです」
「ここまでは大丈夫ですか?大丈夫であるなら続けます」
「四つ目は『エルフ族』。森や川などの自然を愛し守護する、耳が長く寿命が長い種族です。目が良く遥か遠い場所まで見渡せると言われています。その他には誰も彼もが『精霊』と呼ばれる自然を司る存在と契約してます。『精霊』については後ほど説明します。
五つ目は『ドワーフ族』。体が小さく鍛治が得意な種族です。『鍛治』というのは武器を作ることだと思っていただければ結構です。
鍛冶場を作るために邪魔な森にある木を切り倒すドワーフを、木を切り倒すのを邪魔するエルフを、お互いに嫌い合ってます。『エルフとドワーフの仲』という仲が悪いことを示す言葉もあるほどです」
『エルフとドワーフの仲』というのは『犬猿の仲』みたいなものか。そんなに仲が悪いのかよ‥‥‥。
「最後に六つ目。六つ目は『妖精族』。妖精族は皆、魔法に秀でた種族です。様々な体の大きさの妖精がいます。掌に乗るくらいの大きさから人と同じほどの大きさまで。
以上がこの世界に存在する6つの種族です」
「獣人や魔人族ってどの位いますか?」
「種数で言うなら獣人族は『犬人族』『猫人族』『鳥人族』『羊人族』『狼人族』ーー
ちょとまって‥‥‥マジで‥‥‥獣人族の種類、多すぎないか!?しかも、一度も言い淀むことなくスラスラと喋っている‥‥‥。
あーなんか頭痛くなってきた‥‥‥。
ーーどうしたのですか?体調が悪いのですか?」
「いえ‥‥‥ちょっと覚えられなくて‥‥‥」
「これは失礼しました。少し熱くなったようです」
ローズ先生は一旦授業を中断して俺の頭痛が引くまで待ってくれた。
「頭痛は収まりましたか?」
「はい」
「よかったです。今度はあくまで例を紹介することにします」
そう言ってローズ先生は授業を再開した。
「獣人族で代表的なものは『犬人族』と『猫人族』です。そこで今回は『人』と『動物』と『獣人』の違いについて学んでいただきます」
「
ローズ先生は何かを発した。すると、タンスの影から
「ワウ!!」「ミャウ!!」
「ご紹介しましょう。こちらの2匹は私が飼っている犬のキャル、猫のミルです。キャル、ミル、こちらは私が教えさせていただいているシズナ様です。ご挨拶しなさい」
「ワウワウ」「ミャウウ」
おお‥‥‥おすわりをしてお辞儀をしたぞこの犬と猫‥‥‥よく躾けられているな~。
‥‥‥というかさっきから気になっていたけど、これを犬と猫と言っていいのか‥‥‥?
犬の方は歯ーーいや、もう
「ではまず、私と彼らを見比べてください。どこが違うか言っていただけますか?」
「えーと‥‥‥身ちょーーじゃなかった。体の大きさ、耳、鼻、口、手、足‥‥‥ですか?」
「惜しいですね。尻尾が抜けてますよ」
「あ、ほんとだ」
「この通り、人間と動物の体の作りは違います。でも
ローズ先生がそう言うと部屋のドアが外からノックされ誰かが入って来た。入って来たのはマクリースさんとミミさんだろう、多分。
そもそもマクリースさんとミミさんって誰だ?今の話の内容からして『獣人』なんだろうけど‥‥‥俺、会ったことないんだよな‥‥‥。
「此方の『犬獣人』のマクリースさんと『犬』のキャル、『猫獣人』のミミさんと『猫』のミルを見比べて違うところを言ってください」
「えーと‥‥‥体の大きさ、鼻、口、手、足くらい?」
「正解です。『動物』と『獣人』は体の大きさ、鼻、口、手、足を除けば耳や尻尾などが似ています。そのため『獣人』は『動物』が人間型に
なるほど‥‥‥つまり、『獣人』は『動物』が
いくらなんでも、流石にそう伝えるのは憚られる‥‥‥だからどうか、この気持ちよ伝わって‥‥‥!!。
「あら?もうこんな時間ですか‥‥‥続きは明日にします」
「それではさようなら」
ローズ先生が部屋から出て行くと、キャルとミル、マクリースさん、ミミさんも出て行った。
ーーキャルとミルをモフりたかった‥‥‥そんな授業でした。