出会い
薄暗い廃墟にある地下の牢獄に、1人のブロンドの髪をした美しい令嬢が囚われていた。
白く細い足首と腕には、壁から繋がれた鎖で拘束されて動くことが出来ない。一体誰がこんな酷いことを……。なんて、通りかかる人がいるならきっとそう思って助けようとするだろう。
しかし、ここは街から離れた、森の奥にある廃墟。誰も助けに来るはずがない。この薄汚れた牢獄で、彼女はただ死を待つだけの運命。このままならね。
*
私の名前はソフィア。ディアリス公爵家の長女。17歳。今、心は強い憎しみと復讐心に燃えている。
「このまま死んでたまるもんですか……!」
そんな強い想いとは裏腹に、身体は悲鳴を上げている。何度やってもその鎖は外れるはずが無く、ただその手足を痛めつけていた。食事もずっと摂っていないため、空腹は限界を迎えている。少しだけ弱気になりかけてきたその時、どこかで足音が聞こえてきた気がした。
「誰かいるの……?」
俯いたまま尋ねてみるが、返事は無い。大体こんな場所に人が来るはずがないのだ。幻聴まで聞こえ始めてきて末期だな、なんて思いながら頭を上げてみると……
目の前に、14歳くらいの少年が私を見下ろしていた。
その少年の姿は黒髪の見たことのないような顔立ちで、服も見慣れないものを着ている。そして、死んだような目をしているのが印象的だった。
ふうん、あの死んだような目。異国から連れてきた奴隷かなにかなのかしら。でもちょうどいいわ。あの少年奴隷を利用して助けてもらいましょう。
そう考えていたら少年が口を開いた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるの?私、鎖で繋がれているのだけど」
「見ればわかります。喋れるなら大丈夫そうですね。それでここはどこなんですかね?」
奴隷のくせに生意気な……。それに自分がどこにいるのかも分からないなんて頭の中どうなっているのかしら。私がそんな事を思っているとも知らずに少年は続けて口を開く。
「なんか急に目を覚ましたら、こんな薄汚い場所に居たんだけど、撮影か何かですかね?」
……さつえい?この少年は何を言っているの?
「僕、テレビに出演するなんて言った覚えはないんだけどなあ。すみません、一旦中止してもらってもいいですか?」
次々と聞きなれない単語が少年の口から飛び出してくる。頭が混乱してきた。
「何を訳の分からないことを言っているの?とにかく私を助けなさいよ!」
手に繋がれた鎖をじゃらじゃらとさせながら叫ぶ。少年は少しの間、頭を抱えてこう言った。
「うーん、助けたら教えてくれますか?ちょっと鎖を切れるような物が落ちていないか探してくるので待っていてください」
そう言うと少年は、何処かへ行ってしまった。
「何……あの少年……?」
再び地下の牢獄には静寂が訪れていた。