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第01話 初依頼

 
 朝は凄く早く目覚めた。
 昨日はすぐに寝付いてしまったから、その分朝は早く目が覚めた。
 まだ日も登って無いので、朝食もまだやってないだろうな。

 今日は朝食を食べたら冒険者ギルドに行って、昨日の続きだろうな。でも、時間があったら依頼も受けてみたいんだよな。薬草採取。
 今更って言われるかもしれないけど(倉庫半分が満タンになるほど出したから)俺は一つしか採った事がないんだよな。ぜーんぶ衛星達がやってくれから。

 ある意味楽してるけど、俺だって依頼の一つや二つ熟してランクを上げたいじゃないか。今回の買い取りで上がりそうだけど。これはマスターの判断だから、ランクがどうなるかは分からないね。

 そして念願のレベル2だ。こっちの方が大事だね。


 まずは、今の持ち物の確認だ。
 服はオッケー、装備もオッケー、どちらも衛星に出会った時に裸だったから作ってもらったものだ。未だにダメージを受けたことが無いので、どのぐらい防御してくれるのか分からない。

 もちろん鑑定で見たから数字の上では分かってるんだけど、実際どのぐらいの衝撃が来るものなのか全く分からない。

 収納の中には剣、洋弓、和弓の武器が入っている。
 剣も弓もベンさんに少し手ほどきを受けた程度の腕前だ。もちろんレベル1だから、大した攻撃にはならないだろうね。もう少しレベルが上がればそこそこ役に立つようにもなるんだろうけどね、今のままではあまり期待できないな。

 でも、剣と和弓には発動技がある。攻撃力も高いしね。
 ちょっと恥ずかしいのを我慢すれば、凄く役に立つ技だ。一人の時だったらいくらでも使ってやるよ。

 これで衛星より先に攻撃をすれば、倒せないまでも少しぐらいは経験値が入るんじゃないだろうか。っていうか、なんで衛星は俺が攻撃をするのを邪魔するの?
 俺のレベルが上がるのを嫌がってるのか? そんな事ってあるの?


 よく考えてみよう。まず衛星と話し合いはできない、しゃべれないからね。こいつらって『Sir, yes, sir』しか言わないから。あと、丸とバツで少しは意思疎通ができるけど、会話にはならない。

 なんで俺のレベルアップを阻止するのか。そこんとこをよく考えてみよう。
 初めの出会いはどうだったか……「俺を助けろよ」だったか。
 俺を助けろ…確かに助けてもらってるな。魔物からだけじゃなく服から食事から移動や武器の練習の時にも回復してくれたり。それを忠実に守ってるって事か?

 確かに、あれからずっと助けてくれてるよ。言った事もある程度聞いてくれている。人間を殺すなってのも守ってくれてる。
 という事は、俺の言葉を聞いてくれるって事だ。
 じゃあ、俺が魔物に対して攻撃するのを邪魔するなって言えば、聞いてくれないかな?
 そう、衛星には守備・防御に徹してもらって、攻撃は俺がするって言えば聞くんじゃない?

 よし、それで行こう。

「衛星達、集合!」

 俺の前に一列に浮かんで綺麗に横並びになる衛星達。

「少し話し合おう。まずは今まで守ってくれてありがとう。感謝してるよ」

 衛星達がぐにゃぐにゃな列になる。これって照れてるんだよな?
 言ってる事は分かってくれてるみたいだ。

「それで、俺もそろそろレベル1から卒業したい。レベルを上げたいんだ。だから俺が魔物に攻撃する時に邪魔をしないでほしいんだ。弓を射ったら弾いたりしないでほしいんだけど、お願いできる?」

 端から見たらシュールな絵なんだろうな。球に向かってしゃべる奴。あ、他の人からは見えないんだったか。
 余計にダメじゃん! 何も無い空間に向かってしゃべる奴って痛い奴以外の何者でもないよ。

 ん? 衛星達は一列になったままだな。質問をすると丸かバツで回答してくれるのに。

「返事をしてくれないの?」
 動かないね。

「確かに守ってくれてるから凄く助かってるんだけど、俺もレベルを上げたいじゃん! いつまでもレベル1は嫌なんだよ。分かってくれよー」
 動かないね。

「じゃあ、今まで通りなわけ?」
 衛星達が丸を作る。

 なんでだよ! どうしてなんだよ!
 これじゃ、いつまで経ってもレベル1のままじゃん! 別に攻撃を受けたことも無いし、食事も美味いものを食わせてもらってるよ。レベルを上げる必要も無いのかもしれないけど、上げたいじゃん!

 絶対、何か方法があると思うんだ。
 もう一度よく考えてみよう。そう、冷静に冷静に。

 まず、機械の音声みたいな英語だな。初めもそうだった。なんか英語を言って衛星達が出て来た。衛星達も『Sir, yes, sir』って言うけど、機械の音声みたいだし、英語だし。
 この辺りに何かヒントが隠されてるんじゃないだろうか。

 ん―――……思いつかないな。だいたい俺って英語話せないし。初めに何て言ってたか分かんないし。

 でも、機械だとしたら、何かのキーワードで動き出したんじゃないかな。「俺を助けろよ」ってのがそうかもしれない。
 あくまでも想像でしかないけど、キーワードで起動したプログラム通りに命令がされてて融通が聞かないとか? だったら、攻撃阻止なんかもキーワードで解除できたりしない? もう助けるな。助けなくてもいい、お前達の仕事はもう終わりだ。とか……

 いやいやいやいや、それは困る。レベル1で衛星の加護が無ければ、すぐに魔物にやられる自信しかない。だいたい俺ってビビりなんだから、勇敢に魔物に立ち向かって行けるわけないじゃん。
 衛星達の守護があってこそ、俺も強気でいられるわけだよ。助けなくてもいいなんて、間違っても絶対言えないキーワードだよ。

 他に何かないかなぁ。守護はこのまま、しかし俺も攻撃ができてレベルアップが望めそうな…そんな魔法みたいな言葉が。

 ……思いつかないね。
 思いつくまでこのまましかないか。衛星の加護が無くなるのが一番困るからね。
 攻撃や防御もしてくれるし、武器や防具や料理まで作ってくれるチートな奴らだ。解体もしてくれるから、冒険者ギルドでもそのまま売れたし、俺もそこそこお金持ちになれそうだよな。未だに貨幣価値がよく分かんないけどね。


 結論としては、当分この状態で行って、衛星達に養ってもらう。
 何かキーワードを思いついたら試しに言ってみる。
 衛星の隙をついて、なんとか経験値を奪取する。

 本当に合ってるかどうかも怪しいけど、結構辻褄が合ってると思うんだよな。
 他にできることも無いしね。

 よし! これで行こう。




 朝食を摂り、装備を整えて冒険者ギルドへ。

 冒険者ギルドに着くと、待ってましたとばかり、マスターが出迎えてくれた。
 隣にいる馬耳お姉さんのポーリンは元気が無さそうだ。大分疲れてるみたいだね。熊のおっさんもちょっとやつれたか?

 元気なのはマスターだけだね。

 やっぱりまた倉庫で昨日の続き。「さあ出せ!」って凄まれるから出したよ、倉庫が満タンになるまでね。

 まだあるよなって言うから頷くと、ポーリンと熊のおっさんが睨むんだ。
 俺はどうしたらいいんだよ!

 一回目が終わって、後は昼からだってマスターが言ったから、薬草採取の依頼を受けていいかと尋ねたら、今は無いって言われた。

 確かに出しすぎたんだろうさ。

 そんなので価格破壊とか後で言われても知らないからね。出せって言ったのはマスターだからね。仕舞わなくてもいいって言ったのもマスターだからね。
 俺に文句は言わないでよね。

 やっぱりこの後、気になって聞いてみたけど、各ギルドがそのあたりは上手くやるそうだ。

「うちは提供するだけだ! 後は専門家がなんとかするだろ」だって。

 丸投げかい!

 ま、個人や商店に出す訳じゃなく、各ギルドに出すらしいから、そこはなんとかするのかもね。


 昼までは、どこにも行くなとは言われたけど、昼に出したら後は夜まで好きにしていいって言われたんで、討伐依頼を確認してみた。

 ゴブリン! あるじゃん、ゴブリン。
 これこれ、こういう初心者的なやつがやりたいんだよ。
 だって、冒険者二日目なんだよ、俺は。

 昨日は登録してマスターの部屋に行って倉庫で終わりだからね。今日こそは冒険者の仕事をしたいじゃないか。

 なになに? ゴブリン五匹討伐依頼。
 うんうん、で? 討伐達成証明は……書いてないね。報酬は銀貨一枚?

 安っ! 宿にも泊まれないじゃないか。
 まだ、もう少し余裕はあるけど、早く稼ぎたいんだよね。

 衛星がお金を出してくれるって? そうなんだよね、それは俺も考えたんだけど、それこそ流通がおかしくならない?

 もし、流通がおかしくなって、調べられて、俺が疑われたらヤバいじゃん!
 何度も言うけど、俺はビビりなんだよ。

 でも、あと金貨一枚ぐらいなら……いやいやダメだ。冒険者になったんだからキチンと依頼を熟すんだ。


 依頼達成の件もあったし、昨日のお礼も言いたかったので、アイファの窓口に並んだ。
 まだ朝早かったから、結構な数の冒険者がいたんだ。


 俺の番になって、アイファにお礼を言った。

「昨日はありがとう。すぐに帰っちゃったんだね。お礼を言おうと思ってたら、もういなかったから。今度、食事でも奢るね」
「なっ、なによ! それってデートに誘ってるわけ? そんな簡単に誘われるわけないでしょ!」
「いや、そ、そんなつもりじゃ」
「でも、ま、イージがどうしてもって言うなら一回ぐらいは付き合ってあげてもいいわよ」

 やっぱりツンデレだー。

「うん、じゃ一回だけでいいから食事に付き合ってね。俺が奢るからさ」
「わ、わ、わかったわよ。一回だけだからね」
「うん、ありがとう」

 ちょっと面倒くさいけど、こういうのもいいもんだね。

「で? それだけ?」
「あっ、もう一つあるんだ。このゴブリンの討伐って、達成証明ってどうなってるの? 何か持ち帰らないといけないんじゃないの?」

 俺の知ってるラノベ世界だと、耳とか切って持ち帰るとかなんだよな。

「ホント何も知らないのね。昨日渡した冒険者カードに何を何匹倒したか出るのよ。素材が必要な魔物だったら持ち帰って来てもらわないと困るけど、ゴブリンから取れる素材なんて無いから何も持ち帰らなくてもいいの。でも処理はキチンとしないといけないわよ。ちゃんと焼いて埋めて来るのよ」

 へー、便利なカードなんだね。
 あれ? でも、衛星が倒したらどうなるんだろ。ちゃんとカウントされるのか?

 昼一番に倉庫を満タンにすると、ゴブリン討伐の為、町の外に出て行った。

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