バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

⭐️


 人には何かしら不思議な能力がある。
 それがこの世界の常識だ。
 だが、生まれた時から、彼にその能力はなかった。
 父は異常な力持ちという能力、母は異常な俊敏さを持っていた。右隣の家の少年は火の生み出すことができ、その左隣の家の少女は植物を異常に早く育てることができた。
 両親はどうにか彼の眠る能力を目覚めさせようと、彼を怒らせたり、海に投げ込んで命の危険にさらしたりして能力の発動を試みた。
 けれども、彼の能力はわからぬまま。
 崖から落としたりもしてみたが、彼は思いっきり落ちて、骨を折った。
 奇跡的に命を取り留め、怪我が完治できてから、両親は諦めた。

 能力がない個性を認めようと。

 そうして、彼に色々なことを仕掛けるのをやめた。

 ある日、彼の街にそれはそれは、とても可愛い子が引っ越してきた。
 少年も遠目に可愛いと思っていたが、話かける勇気がなかった。
 彼女が引っ越ししてから1ヶ月後、少年はばったりと少女に会った。

 白いワンピースに金髪のツインテール。
 瞳は空色で、まつ毛は長く、おめめパッチリ。
 彼は彼女の前で固まってしまった。

「メテオくん?」

 そんな彼女は無防備にも彼に近づいた。
 ずきゅんと、胸を射抜かれたような衝撃が彼に走った。
 同時に轟音!
 
「おい!何ぃいい?」

 低い、とてもじゃないが少女の声じゃない。
 だがそんな声が可愛らしい少女から聞こえた。
 二人の視線が交差する。
 少年は伸ばしかけた手を思わず止め、隕石はそのまま彼女に直撃した。

しおり