224 や、く、そ、く
「そんなひ必死に首を横にふるなんて、もしかして、その、女性には興味がないとか?」
あ。
ローファスさんにあらぬ疑惑が!
「あら、まぁ……。そういう方もいらっしゃるとは聞きますし……」
「でしたら、養子になさればよろしいは。そのうえで、やはり公爵家のためには奥様は奥様で……ね?」
え?
容認。あ、いや。貴族社会が案外同性愛的なものには寛容なのは日本も同じだっけ。織田信長と森蘭丸の噂とか。小姓ね。あとは歌舞伎の世界だとか……。
で、でも、一応、違うことだけは伝えておかないと……。
「あの、ローファス様は、女性からもてるそうです。その、お付き合いした女性も何人かいると……サーガ様がおっしゃっていました」
不名誉なことじゃないから否定する必要なはいのかもしれないけれど、気もないのに男性から言い寄られたり、女性から声がかからなくなったりしたらちょっと大変ですよね?の、つもりだったんだけど。
遠慮気味に小さな声で発言させてもらう。
……遠慮気味に小さな声だったのよ?決して「黙れ!」とか恫喝するような大声じゃないのに。
ぴたりと、会話が止まった。
皆の視線が私に集中する。
「そういえば、リリアンヌ……このかわいらしいお嬢さんは?サーガとも知り合いなの?」
王妃様がにこっとほほ笑む。
「ああ、そうでしょ?かわいいでしょ?でも、あげないから!絶対あげないわよ?いくら殿下でも陛下でも誰にもあげないんだから」
むぎゅぅ。
あ、いや、いま抱きしめるタイミングじゃないと思うんです、化粧してもらったし、服に化粧ついちゃいますよっ。
「取りませんわよ。だから、リリアンヌ、そろそろその、離して差し上げないと……」
ありがとう、王妃様!窒息しそうになってます。
はーはー。ぜーぜー。空気、空気。
「絶対に、ユーリちゃんを私がいいって言わない限り取っちゃダメですからね?契約したいくらいですが、今回は皆様を証人として約束してください。じゃないと、ユーリちゃんのこと教えるわけにはいきませんわ」
王妃様がちらりとローファスさんを見た。
「そんなに、ユーリちゃんは、リリアンヌにとって大切な子?」
「リリアンヌの大切な子じゃない。俺の……俺たちの大切な子だ」
うぐっ。
ばかもーーーんっ!と、ハリセンがあったらローファスさんの頭を思いっきり張り倒してた……。
嫁探しだと思われてる場所で大切なお嬢さんを紹介するとかいうシチュエーション、絶対誤解される。なんとかローファスさんもそれに気が付いて俺たちのって言い直したけど、無理。
なんかみんなの目が、目が、ああそうなのねって目になっている。
「そうなの。わかりましたわ」
王妃様、ぜったい、そうなのの、そうは誤解してる。
あのね、リリアンヌ様もローファスさんも……「俺たちの大切な料理人」って言いたいだけだから!
「ユーリちゃんを欲しがらないと、お約束いたしましょう。皆さんが証人ですわ。もし約束をたがえるようなことをすれば、王室の信用を損ないます。貴族とは何を約束しても反故にすると思われては、国家が存続できませんからね」
あら?
以外と、何でも契約魔法で契約するのかと思ったら、約束は約束でそれなりに意味はあるの?
「ふふ。では、教えて差し上げますわ」
リリアンヌ様が立ち上がる。
「このチョコレートの原料のカカオ豆は、ユーリちゃんが発見したのです!」
ちょっと違う。
リリアンヌ様がばばーんと私も立ち上がらせ、両手で私の肩をつかんで皆のほうに向ける。
リリアンヌ様、どや顔は忘れてません。
「まぁ!」
「すばらしいですわ!」
ご婦人たちが小さく拍手をする。
「そして、原料を発見しただけではなく、チョコレートの作り方や、チョコレートを使ったお菓子の数々のレシピを教えてくれたのも、ユーリちゃんなのですわ!」
さらに拍手が大きくなる。
「さらに、このシャーベットという冷たいお菓子の作り方も、ユーリちゃんが!」
そこで王妃様が立ち上がった。
「リリアンヌ、お願い、ユーリちゃんを私の養子にさせて!」
はいー?
約束はどこ行った!
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手のひら返しすぱーん。
(´・ω・`)
さて、お知らせ。そろそろ分岐コースも終わる予定。
ふぅ。長い。長かった。長いのよー!バタバタバンバンっ!