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「皆様、お待たせいたしましたわ」
リリアンヌ様の一歩後ろをついて東屋に向かう。
王妃様の右側にシャルム様、さらにその右側にローファスさん。王妃様の左側に空席が二つ。そして、10名ほどのきらびやかなドレス姿の大人の女性たちが丸テーブルを囲んでいる。
……王妃様のすぐ隣がリリアンヌ様の席で、もしかしなくても、その隣の空席が、私の席ですよね……。
「そちらのお嬢様は?」
と、薄緑色のドレスのふくよかな女性が口を開く。
この場では王妃様の許可を取って発言というようなそういう正式なルールは不要のようです。
「ローファスが目をかけている娘ですわ」
と、リリアンヌ様が言った瞬間、キラリと集まった女性の目が光った。
あ、これ、誤解される言い方だ。
誤解は解かないと。
「ローファスさ……まには、冒険者見習いとしてお世話になっております」
冒険者の後輩としてね、目をかけてもらってるだけなのよ?誤解しないで?
「あら、冒険者?どこかのお嬢様ではなくて?」
失敗したかな?
もしかしなくても、冒険者に対する差別みたいなのあったり?
ローファスさんがS級冒険者というのはみんな知ってるんだよね?
「私は、今すぐにでも娘にしたいと思っているのですけれど……」
と、リリアンヌ様がシャルムにちらりと恨めしそうな視線を送る。
はい。養女の話ですね。ですが一部の人は誤解したようで。
「ふふふ、ローファス様次第というわけですか?でも、まだ少し若すぎるようですし、リリアンヌ様もあと数年我慢しなければね」
とか言ってます。
嫁にはなりませんよ?
「あら、来たようですわ。お話は後にいたしましょう。時間が経つと溶けてしまいますからね。冷たいうちに召し上がれ」
と、ガラスの器にチョコレートシャーベットが乗せられ、配られた。
かわいい白い花がガラスの器を飾り、ナッツがシャーベットの上にちょんと乗せられている。さらに、細く切ってカリカリに焼いたパンが添えられています。
……昔懐かし喫茶店のアイスにウエハースが刺さっているあのイメージを伝えたのです。
カリカリに焼いたパンがおいしいというのは、ローファスさんが料理人にトーストを伝えたようです。
それを、さっそく組み合わせるとか、公爵家の料理人もなかなかやりますねふふふ。
「【浄化 解毒】ではいただきましょう」
上座に座る王妃様がスプーンを手に取りチョコレートシャーベットを一口。
「うっ」
王妃様が立ち上がる。
「許せませんわね……」
え?な、なにが?
「ふふ。ですわね。私たちからチョコレートを食べることを奪う人がいるなんて、許せませんわよね?」
リリアンヌ様が黒い笑みを浮かべる。
「溶けてしまいますので、皆様もどうぞ」
王妃様が座り直して、シャーベットをもう一口。
「リリアンヌ……あなた、気絶したでしょう?」
「ええ。それが……2回も!同じものを食べて2回も気絶しちゃいましたわ」
「ああ、やっぱり。これは、2回気絶するのも分かりますわね」
え?
リリアンヌ様の気絶がおいしいもの基準な王侯貴族って何なの!
「はぁー。幸せの味ですわね。冷たくておいしいわ。もっと暑い季節に食べたら、よりおいしく感じるのかしらね」
「私の領地は暑いですから、一年中食べていたいですわ」
「あら、冬場でも、暖炉の前で食べたらおいしそうですわよ?」
「本当ですわね!ふふふふ。つまり、一年中食べていたいということに間違いありませんわね!」
と、王妃様が笑う。
「リリアンヌ、今日のパーティーは、このチョコレートという美味しいものを皆に自慢したくて開催なさったのかしら?噂では、ローファスの集団見合いだと聞いていましたが」
王妃様がちらりとローファスさんの顔を見る。
ローファスさんは、もう、なんか、首もげますよっていうスピードで首を横にぶんぶんと振っている。
「ふふ、私、一言もローファスのお嫁さんを探すためのパーティーなんて言っていませんのにね。どうにも、うちの息子は女性のエスコートは苦手なようなので……自分で何とかできるようには思えませんのよ」
「あらあら、でしたら、私がよいお嬢様を紹介いたしましょうか?」
「それでしたら、あなたのところは年ごろのご令嬢がいらっしゃいませんでしたか?」
ローファスさんが、集まったご婦人たちから一斉に女性のあっせんを受ける。
ああ、首がもげますよ、もげるって。
なんか、噴き出した汗が、飛び散りそうですよ……。あ、ハンカチ取り出して拭いた。
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発売日なのでございますよ!ございますよー!たぶん。
あ、思い出せた。
そう、
ハズレポーションが醤油だったので料理することにしました 2巻
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