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219 かわいい、かっこいい

 ……話の流れからすれば、レベルを10にあげるための何かっぽいけど……。あまりいい予感がしません。ごめんなさい。使用人のみなさん……。
「おっと、話をしている間に溶けてしまいますわ!話はあとです!」
 リリアンヌ様が3口目を口にする。
「ふわぁー。う。うう。はぁー。なんとか意識は保てましたわ」
 そして4口目。
「ふぅー。至福ですわ。意識も保てていますわね。これなら、パーティー中に意識を失う心配はなさそうです。あ、ユーリちゃん、さっき言ってた他のシャーベットだけど、本当はすぐにでも食べたいんだけれど、パーティー中には出さないでね。気を失う自信があるから」
 はい。分かりました。なんか、すごい方向への自信です。
 というわけで、シャーベットの試食が終わると、あわただしくリリアンヌ様はパーティーに向けての準備です。
 お風呂の後にはオイルを塗りこんだりとか貴族の人は大変です。
 なんて思ってたら、私もパーティー準備で侍女さんたちにこねくり回されることになりました。とはいえ、子供認識されているため、レディ的なものはなし。
 ドレスを着たあと、髪の毛を入念にとかれ、つやつやしてきたところで結い上げられ、ドレスと同じ色のリボンを結ばれ……。
 三十路の頭にリボンが!とおののいている間に、白粉を叩かれ、頬紅とリップで簡単に化粧を施された。
 ……。
「かわいらしいですわ。黒髪に黒い瞳なので、どんな色とも相性が良くてうらやましい」
 紫の瞳の侍女さんがほうっとため息をついた。
 なるほど、色合わせに関して言えば、黒は何色でも合うって考え方があるのか。
 そこまで準備が進んだころ、屋敷の外が騒がしくなってきた。
 カーンカーンと銅鑼よりはもう少し音の高い金属を打ち鳴らすような音が聞こえる。「〇〇男爵夫人××様及びご令嬢××様おなーりー」みたいな到着報告が聞こえてくる。男爵、子爵、伯爵……と、どうやら位の低い人ほど早く到着しているようだ。そういう決まり?
「さぁ、準備が整いました」
 と、侍女さんに言われて化粧室を出る。
「うわー、ユーリお姉ちゃんかわいいのよ!」
「すげー、本物の貴族みたいだ!」
 と、案内された部屋にはすでにキリカちゃんとカーツ君がいた。
 二人ともとってもかわいい。あ、カーツ君にかわいいは失礼かな?でもかわいいものはかわいい!
「あ、ブライスお兄ちゃんも来た!」
 キリカちゃんの声に振り返る。
「あ」
 いつもの女の子と間違えても仕方がないくらいの美少年が、軍服に近いデザインの男の子らしい服に身を包んでいる。
 似合う。
「素敵だね。ブライス君よく似合ってる」
 眼福。
 ブライス君は、私の言葉にもしばらくぼーっとしたまま何も返事がなかった。
「お前たちは庶民にチョコレートを進める役割だって?なんで俺だけ貴族連中の相手しなくちゃならないんだよっ、ブライス、お前も俺と行こう」
 騒々しくローファスさんが部屋に入っていた。
 その声に、初めてブライス君の意識が戻ったようです。
「あ、ユーリさん、とても、その……綺麗です。僕……えっと……」
「ありがとう」
 三十路リボンだけど、実は鏡を見たら似合ってるなとは思ったので、素直にお礼を口にする。
「ちょっと、かわいくしすぎじゃないか?」
 とローファスさんの言葉が降ってくる。
「え?か、かわいくしすぎって?」
 顔を上げてローファスさんを見る。
「あ」
 冒険者の影などどこにもない。
 口を閉じさえすれば、そこにいたのは精悍な騎士だ。
 いや、近衛兵という言葉のほうが似あうだろうか。
 白い正装。白いマント。整えられた髪。
 かっこいい……。
「何を失礼なことを言うんですか!」
「いや、だって、こんなにかわいいと、養子にしたいって言う人間が出てくるかもしれないだろっ!」
「なんですか、それ……」
 ブライス君がこめかみを抑えた。
 ほっ。いつものローファスさんだ。なんだか、冒険者の姿をしていないローファスさんはやっぱり公爵の人間なんだってちょっとだけ遠い人のように感じてびっくりしちゃった。
「ユーリは誰にもやらんっ!」
「は?何言ってるんですか?ユーリさんはローファスさんのではありませんよね?」
 ローファスさんとブライス君がいつものじゃれあいを始める。
「ブライス、お前も誰にもやらんっ!母上がお前を養子にしたいと言っても断ってくれよっ!」
 あ、リリアンヌ様……ローファスさんに何か言ったのね。

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褒め合い。

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