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「まぁ、あれだ。実際の効果は大人になってから、俺が教えてやる」
 というローファスさんの言葉に、ブライス君の放った氷の剣がローファスさんにぶち当たった。
「絶対に、ダメです!そりゃ、何年後かは、この効果が必要な体にローファスさんはなっているかもしれませんが、使うのは勝手ですけど、ユーリさんに手を出すのは許しませんっ!」
 怒り狂ったブライス君の言葉に、ローファスさんの膝ががくんとなった。
「あ、ち、違う、違うぞ、教えてやるっていうのは、体でっていうことじゃなく、その」
 ローファスさんが私の顔を見る。
「ああああ!違う、す、すまん、誤解だ、いや、あの……」
 は?体で?
 ブライス君とローファスさんの特訓を思い出す。体に刻み込め!的な教えられ方?む、無理。そんなの……。
「ローファスさん相手とか、絶対、無理です……」
 涙目で答えると、ローファスさんの顔が真っ赤になった。
「だ、だから、ユーリ、違う、そんなことしようと思ってなんてないからな?あ、そ、そうだ!ギルド長に呼ばれてたんだ、あとは頼んだぞ!」
 ローファスさんが逃げるように部屋を出ていった。
「ねーねー、どんな効果があるの?教えて、キリカ知りたいのよ!」
「そうだよね。キリカちゃんも知りたいよね。ブライス君、えっと、4つも効果があるんでしょ?一つも教えられないの?」
 ブライス君が視線をさまよわせる。そして、意を決したのか、小さな声でつぶやいた。
「媚薬系の効果が2つ、大人の男性にのみの効果が一つ、それから恋愛運が上がるようです」
 媚薬系?
 惚れ薬とかそれっぽいの?
 大人の男性のみの効果って……女性と男性の違いとか媚薬とかって単語から想像したらあれしかないよね。
 それを体で教えるって、えええーーっ!ちょ、ちょっ!
 いや、体で教えるなんて言ってなかったけど……。
 ブライス君の言葉で、絶対何か、ローファスさんも想像したよね?
 じゃなきゃ、あんなに顔を真っ赤にして焦ったりしないよね?
 うわー、ちょ、恥ずかしすぎるんだけど!
 ……でもよく考えたら、地球でもカカオ豆って滋養強壮として使われてた歴史もあるし、媚薬系ってそういうことかな。
「あ、そうだ、少し試したいことがあるんですが、MPポーションを使った料理を持っていませんか?」
「ありますよ。ちょっと待ってくださいね」
 何かのために少しずつ持ち歩くことにしているのである。
 干しブドウにMPポーションを振りかけて、パンにはさむ。
 ブドウパンみたいな感じで、簡単だけれどなかなか美味しく食べられるんですよね。
「ありがとうございます。ではいただきます」
 と、ブライス君が簡易ブドウパンを食べた。何を確かめるつもりだろう?
「ステータスオープン、ああ、やっぱり思った通りですね。魔力増強剤で、一瞬だけ魔力が上がるんじゃなくて、魔力上限値がしばらく上がるようです。とすると、MPポーションと魔力増強剤を組み合わせれば、何度か高度鑑定魔法も使えそうですね」
「マジか?すげーな、ブライス兄ちゃん!」
「じゃぁ、何か高度鑑定するのよ!これ、これ見てほしいのよ!」
 キリカちゃんが指さしたのは、赤い石のついた、呪いのネックレスと言われていたものだ。
「【高度鑑定 結果表示】」
 うん、不思議なことにステータスもそうだけど鑑定結果も文字が読めないのに分かる。だって、日本語に私の目には映っているから。
 強い防御能力のあるネックレス。あまりにも強い防御能力があったため、過去に身に着けた王女に手を出せる男性が一人もおらず生涯独身となってしまった。結婚を夢見ていた王女の怨念が呪いとなり、このネックレスを身に着けた者は結婚できない呪いにかけられる。
 なんだ。結婚できない呪いなんだ。
 もう結婚してる人はどうなるのかな?離婚しちゃうっていうことかな?
 ブライス君も鑑定結果を読む終わったようだ。
「呪いが命に係わるようなことじゃなくてよかったですね。ほかも鑑定してみましょう」
 と、ブライスくんが棚から何を鑑定しようか品定めを始めたら、キリカちゃんがネックレスをつかんだ。
「キリカちゃんっ!駄目よ!」
「え?でも、命に係わるわけじゃないんだよね?ちょっとだけね、ちょっとだけならいいよね?」
 キリカちゃんの目がキラキラしてる。
 うーん。気持ちは分かる。小さな子って、宝石とかネックレスとか指輪とか、とにかくアクセサリー類好きだよね。
「ちょっとだけなら……いいかな?ちょっとだけよ?」
「うわーい。はい、ユーリお姉ちゃん、つけてあげるのよ」
 え?私?
「わー、似合うのよ!綺麗なの!あのね、キリカね、ユーリお姉ちゃんがきれいになるの嬉しいのよ!」
 何?私に着けてあげたかったの?キリカちゃんがつけたかったわけでなく?
「あ、本当だ!ユーリ姉ちゃんすげぇ似合う」
 そうかな?
「キリカちゃんにも似合うと思うよ?つけてみる?」
 首からネックレスをはずそうと手をかける。
「ん?何かに引っかかってるかな?」
 ネックレス、動かないです。

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防御力特化のネックレス……ですか……

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