鈴と凛
ゆら。
ゆらら。
手をかざし、空を見上げた。
庭の物干し竿、麦わら帽子そして入道雲。
蝉声《せみごえ》も流れ落ちる汗も、ただ陽炎《かげろう》のようだった。
「まいどはやー? ……まめけ?」(ごめんください……大丈夫?)
幼馴染のしっとりした手が私の額に当てられる。
「ねっちゅーしょーなるよ?」
「……うん。」
「こっち来《こ》られ。」(こっち来なさい。)
畳に座りポンポンと膝を|打つ《たたく》。
「良《い》いの?」
「はよう。」(早く。)
「……ひゃっこい。」(ちめたい。)
「じょうずこくがうまいの。」(おだてるのがうまいね。)
「ほんとやち。」(本当のことだよ。)
ゆら
風鈴の音色は、沁《し》みる。
さて、誰と話していたのでしょうね。
*主語を省略は意図的です。あしからず。