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私がチョコレートの作り方を説明すると、要点をまとめながらロッテンマインさんが紙に綺麗な字でメモしていく。
あ、綺麗な字かどうかは、こちらの世界の文字が分からないのでなんとなく綺麗に見えるんですよ。文字が上下にずれてたり大きさが不ぞろいだったりしないだけでも綺麗でしょ？
「この時のタイミングは？」
私の説明で不足していると思われる部分はロッテンマインさんが質問してくれた。
「あとはお任せください」
そして、ふっと不敵な笑いを残し、薬研ゴリゴリしてる二人の元へ行き、指示を飛ばし始めた。
「じゃぁ、寝ましょうね」
あれ？
お屋敷は広いんですよね。食事の前まで客室に通されていたと思うのですが。
「ふわー、大きなベッドなのよ！」
「さぁ、キリカちゃん、カーツ君、ユーリちゃん、おいで、おいで」
ベッドに腰かけたリリアンヌ様が手招きしています。
「うわー、ふかふかなのよ！」
ベッドに飛び込んだキリカちゃんをリリアンヌ様が抱きしめる。
「かわいい！ああ、子供のいい匂い！」
うん。分かる。お風呂に入ったから、今日は特にいい匂いですよね！私もキリカちゃんぎゅーしたい。
カーツ君はぎゅーしたらさすがに怒るかな……。っていうか、男の子の場合は女の子より臭いんですよね……。決して悪い意味ではないけど。
女の子と匂いが違うの。０歳児からだよ？
「さぁ、寝ましょうね。疲れたわよね」
「えっと、俺たちどうやって小屋に戻ったらいいんだ？王都から小屋まで遠いよな？」
布団に入ってカーツ君が話しかけてきた。
そういえばそうだね。
「やっぱり、帰っちゃうんですのね……」
リリアンヌ様が残念そうな声を出す。
「ねぇ、ユーリお姉ちゃん、帰ったら卵いっぱいあるかな？」
そうだ。卵とかどうなったんだろう？日持ちするから大丈夫だとは思うけれど、温められていて、羽化前の卵を割ってもなぁ……。
そういう状態の料理もあることは知っているけれど……ちょっとなぁ……。蛇のしっぽ付きとか無理です。
「そうだね。早く帰ろうね。泡だて器も使ってみたいし」
卵に泡だて器。はちみつももらったよ。砂糖もあるし。パンケーキ作ろうね。パンケーキ。
「早く帰りたいんですね……。寂しくなりますわね……。ですが、数日はいていただくことになると思います」
数日？
「明日にでも兄に相談ますが……国としてどうするのかそれから話が進むはずです」
ああ、そうか。まだ貿易のこととか何も決まってないんだ。
あ、なんか、貿易始めるんですよ。海産物、海産物。って、喜んでたけど、本決まりじゃないのか……。まぁそうか。どこかの企業単位の貿易じゃなくて国単位ともなれば……。
兄と相談してから？
旦那様が将軍だし、兄は宰相とかだったりして……。そういえば、ローファスさんって公爵家だとか言ってた？
リリアンヌ様、公爵夫人！うわぁぁぁ、すごい人だ！今更ながら、すごい人です！
こんな、一緒でベッドで寝るなんて恐れ多い人！
っていうか、なんで私、キリカちゃん挟んで公爵夫人と川の字になってるんでしょう……。今更ですが、なぜでしょう！
「まずは、明日、カカオ豆の価値を王宮の人達に認めさせなければなりません」
あ、そうですそうです。海産物は私が喜んでるだけで、リリアンヌ様としては何としてもカカオ豆を輸入したいんですよね。
はっ！
「もしして、そのために夜にも関わらず、二人にチョコレートを……」
「あら？そういえばそうね。二人に作ってもらったチョコレートを持っていけばいいかしら？」
え？違うの？
「なんだか作り方が薬っぽいので、薬研究所にでも朝から作ってもらうつもりだったんですけれど……」
薬研究所？
あ！そうだ！思い出した！薬として使われていた香辛料も多いから、薬研究所に香辛料あるかもと思ったことがあったんだ。
でも、昨日の料理にはカルダモンが使われていた。料理にも香辛料はちゃんと使われている！王都にはきっと香辛料を扱っているお店もあるよね？
うん。どうせ何日か王都にいなければならないなら、買い物しよう！買い物！
「起きてから考えましょうか。二人には勝負させましたし。どうなっているのか楽しみですわね。ふふふふ」
チョコレート作りで勝負で楽しみ？別に、アレンジとかしないから似たようなチョコレートしかできないですよね？あ、滑らかさ勝負？
うん。私が牢屋で作ったものは、日本のチョコレートの滑らかさは再現できなかった。すりつぶすのが足りなかったんだよね。
「ど、どうだ私の勝ちだろう！まだまだ負けぬぞ」
朝、食堂に行くと……大小さまざまな鍋が並んでいました。
中にはチョコレート。
「……大量……」
「俺だって、豆がまだあれば作れた！豆がなくなったんだから、仕方がないだろう！」
は？
豆がなくなった？
……いや、まさかの味勝負じゃなくて量勝負って……。
「では、味見をしてみましょうか？」
リリアンヌ様がわくわく顔ですが……。
「あの、チョコレートについていくつか注意事項があります。えーっと……」
