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14、まぁ、予想通りってところか

 翌日の昼、俺達はとうとうパトゥリモーニオへ到着した。
 昨夜の豪雨もあって、泉はたっぷりと水を満たしている。雨天の後だからか水は茶色く濁っていて底は見えない。


『まぁ、予想通りってところか』
「ノルドは壊滅、国として機能していないということで間違いないでしょうね」

 上から見た通り、泉こそあれ周辺は荒野となり果てていた。
 遊牧民族が今年の拠点にしているくらいだから、牧草など緑豊かな土地を想像していただけに、残念だ。土地への思い入れなどないから、この光景を見ても溜息しか出てこない。
 住民たちは最期まで戦ったのだろうか。あっちこちに武器が落ちていた。が、その持ち主も、住んでいた場所も見当たらない。ただ一つを除いて。

 管理者が住んでいたのだろう、泉の畔には石造りの3階建ての建物が一棟残っていた。外観はシンプルで、どことなく学校に似ている。ガラスの代わりに木の板が填められていて、それを押し上げるタイプの窓のようだ。
 まずは鑑定をかけるか。

「全てを見通す神の眼!」

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【パトゥリモーニオ】

ノルドで一番大きな泉。及びその周辺地域。どれだけ酷い干ばつでも枯れないとされていることからノルドの宝物と呼ばれる。管理者は6世帯71名だった。
半年前、暗黒破壊神の復活の報を受けて勇者を召喚するも、失敗。彼らには可哀想なことをしてしまいました……。泉の西方半オーラの距離に墓地がありますよ。

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 うん、確実に俺の鑑定に干渉してきている奴がいるな。言葉からして女神な気がする。
 管理者は71名だった、ということはやはり死んでしまったのだろう。それより、泉から西方に半オーラか。すぐにわかると良いのだが。


「取り敢えず、唯一残っているあの建築物を調べましょう」
「危なくないか? 今にも崩れそうなんだが」
「じゃぁ、俺が行ってくるよ。少し時間かかるけど」
 
 モンスターの襲撃を受けた名残なのだろう。壁にはあちこちに亀裂が入っており、一部崩落もしていた。建物自体がいつ倒壊してもおかしくはない状況で、それでも調べない訳にはいかないと話していると1号が挙手して止める間もなく入ってしまった。

「大丈夫か、あれ?」
「まぁ、体が小さいから大丈夫だろ」
「紙のようになっても動いてたしな」
「むしろ、どうやったら死ぬんだ? あれ」

 アルベルト、ドナート、チェーザーレ、バルトヴィーノがヒソヒソと話している。バルトヴィーノのどうしたら死ぬのかという疑問には俺も大いに同感だ。

『ただ待っているのもアレだな。勇者の墓を掘りに行ってくる』
「あ、でしたら俺も行くよ」
「私も勿論行きますわ」

 俺の言葉に皆が俺も俺もとついてこようとする。
 全員で言ってしまったら1号が置いてけぼりになってしまうだろうが!
 ベルナルド先生は鑑定を使えるから来て欲しいし、そうするとアルベルトもついてくる。ルシアちゃんは俺から離れようとしないし、足跡を見極められるドナートやエミーリオも必要かな、うん。

「じゃあ、バルトヴィーノとチェーザーレは留守番で」
「またかよ!」
「わかった」

 やっぱりそうなるな。不満そうなバルトヴィーノとどちらでも良さげだったチェーザーレを残して出発。
 俺が空から、ベルナルド先生が陸から鑑定を駆使しつつ方向を間違えないよう進み、半オーラほど馬車で走ったころ、目当てのものを見つけた。

 それは、ドナートがいなければ見落としてしまいそうだった。十字架と思われる木片が盛り土から少し覗いていた。
 恐らくパトゥリモーニオの神官がきちんとした人だったのだろう。でなければとっくに掘り起されて死体を漁られていたとエミーリオが言う。埋葬の際にきちんと聖別したのが結界となり、遺体を守ったのだろう。

「じゃ、掘るぞ」
「はい」

 掘る、と言ってもエミーリオとベルナルド先生の土魔法で一瞬だ。被せられた土を遺体が見えるまでどかしていくだけの簡単なお仕事。
 出てきたのは、白い布で包まれた塊が5つ。つまり、5人か。

『取り敢えず、1号の所へ戻ろう』
「検分は良いので?」
『ああ』

 正直、俺はクラスメイトの顔も名前も一致していないからな。ここで布を開いても何もできん。
 そんな訳でまた半オーラかけて泉まで戻った。

「よー、お帰りー」
『もう調査は終わったのか』
「ああ。じゃなきゃこんなとこで暢気にしてないさ」

 建物の前で1号がヒラヒラと手を振っている。
 バルトヴィーノとチェーザーレはここで野営となるのを見越してか焚火の準備をしていた。

 1号の見てきた建物内は教会兼この土地の管理者の建物だったらしく、その地下室から1冊の日誌を見つけてきた。それは半年前、ノルドが滅亡するまでの日誌だった。

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