エピローグ
「ただいまー!」
学校から帰ってきた。なんで今日に限って日直なんだよ。久しぶりのいい天気だけど寄り道なんかしないで一直線に家に向かって、それでもちょっと帰りが遅くなってしまった。
靴を脱ぐ時間も惜しいけど、落ち着いて脱いで、きちんと揃える。
「おかえり。ねえりっくん、昨日」
「ごめんお母さん、また後で」
急いで階段を上がりたいけど、お母さんを怒らせないように静かにゆっくり歩く。
僕の部屋の隣のドアが、半分開いた。
「お兄ちゃん、早く早く」
愛里が顔だけ覗かせた。電源が入っていないゴーグルを装着して。
「別にゴーグルつけて待ってなくったっていいだろ」
「だって待ちきれないんだもん」
「智保は?」
「先に行ってるって」
「なんだよ、ずるいな。僕たちもすぐログインしよう」
僕は自分の部屋に入ると、すぐにゴーグルをつけた。制服を着替える時間がもったいない。
ベッドに横になる。
ゴーグルのスイッチに触れようとして、一旦起きた。床を見る。
三日前、あいつがいたんだ。ここに。
本物のリュンタルには、もう行けない。
でも僕には、お父さんが作ってくれた『リュンタル・ワールド』がある。
お父さんやヴェンクーのように本物のリュンタルを旅することはできないけど、僕は『リュンタル・ワールド』で思いっきり楽しく遊ぶことができるんだ。
僕はまたベッドに横になった。
ゴーグルのスイッチを入れ、静かに目を閉じた。