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救われたい心

李緒と別れ、SNSの投稿がクラス中に回り、クラスからいじめを受けた。
友達だと思っていたやつからは信じてもらうこともできず、俺から離れて行った。

初めてサボった時は父親に激怒され、殴られた。
さらに「生きてる価値がない」とまで言われ、ひどく落ち込んでいた。

久しぶりに学校行ったら、椅子には画鋲が、机の中にはハンガーが入れられており、いじめが悪化していた。

なんとか1日を乗り越えることができて、帰ろうとしていたときに

「どんちゃーん」

と、門の前に手を振る子がいた。

「なんで・・・」

そこには見覚えのある制服をきた女の子が立っていた。

「あみ、なんでいるの?」

そう、そこにはあみがいた。

「学校帰りに渡したいものがあって家に行ったらお母さんが出てね、その時にどんちゃんがサボり気味のことも学校でのことも少し聞いたんだ。だから、迎えに来ちゃった」

美香ちゃんが言ったのか・・・情けない姿を今見せたくなかった。

「どんちゃん、今日ちょっと話しよう」

「ごめん。俺、門限が・・・」

「大丈夫だよ。お母さんが遅くなってもいいから話を聞いてあげてって頼まれたの」

そう言われて、小さい公園に移動をした。小さい公園でも木がいっぱいあって落ち着く。

俺たちはその公園にあるベンチに腰をおろした。

「ここ。落ち着くでしょ。私も嫌なことがあったときにはここにきてた」

優しく微笑んだ。

・・・・・・・・・・

沈黙が続いて、話した方がいいのかと思ったが、先に口を開いたのはあみだった。

「ねえ、なにかあった?」

「やっぱり、聞くよな」

話した方がいいよな。美香ちゃんだけでなく、あみまで巻き込んでしまったんだから。

でも、嫌われるのが怖い。

元カノにフラれて、誤解されて、クラスメイトからいじめをうけて、サボって父親に殴られて、今この状況なんて言えない。
思い出すと、涙が目にたまってきた。

ギュっ

あみは小さな体で俺を包むかのように優しく抱いてきた。

「大丈夫だよ。私は、本当のこと言われても嫌いになったりしないよ。無理に話してほしいとは思わない。だけど、一人で抱え込まなくてもいいんだよ」

と、優しい声で俺の耳元につぶやいた。
すると我慢していた涙が出てきて、その涙は止まらなかった。

ギューッ!

あみはさらに強く抱きしめてきた。
もう話さなくてはいけない。そう思った。

「俺は・・・李緒にフラれた・・・」

それから俺はすべてを打ち明けた。

涙を流しながらだったが、あみは目をそらさずに俺の顔、目を見て聞いてくれていた。

「俺、あの家から出ていきたい。この世から消えてしまいたい」

すべて話し終わって涙を拭いているとあみが口を開く。
さっき以上の力で抱きしめながら。

「辛かったよね。寂しかったよね。一番味方になってほしかった親にまでそんなこと言われると。家を出ていきたいって思うのも当たり前だ。でも、消えてしまいたいなんて思わないで。なんで、いじめている人は明るい未来に行き、いじめられている人が暗いどん底に行かなくてはいけないの?そんなの許せない」

あみはまるで自分のことのように話して、抱きつく強さも強くなって、撫でてくれて・・・

そして、俺と視線を合わせてこう言った。

「どんちゃんが消える必要なんてない。だって、なにもしてないんだもん。自信を持っていいの。それにこれ以上どんちゃんをいじめるのなら、私がそいつらをやっつけに行く。どんちゃんが一人で抱え込んで、苦しみ続ける必要もないから」

やっつけに行くって。どうやってだよ。同じクラスどころか高校だって違うのに。
そう思うのが普通なのかもしれないけど、俺はその気持ちより、気持ちを思いっきりぶつけてくれたという感謝の気持ちが出てくる。

話をしている間に時間は夜9時を回っていた。

「そろそろ帰ろうか」

「そうだね。送ってく」

「いいよ。大丈夫。」

そう言ってあみは家に帰っていった。
俺も少し見送った後に家に帰っていく。

誰にも話してなかった気持ち。辛かった気持ちをあみに打ち明けることができたこと。100%ではないが救われたような気がする。

家の前まで来たとき後ろから走る足音が聞こえてきた。
その足音はだんだん大きくなっていって

「どんちゃん!」

俺を呼ぶ声が聞こえた後に後ろから抱きしめられた。

驚いて後ろを振り返るとそこにはあみがいた。

「どうしたの?」

「言うの忘れてたことがあって…ハア・・・ハア・・」

息切れをしていた。

呼吸を整えて、息を吸ってあみは言った。

「今日、話してくれてありがとう。いじめを解決できるわけではない。無責任なことを言ってごめんね。でも、救いたいって気持ちはあったから。あとね、中学校の時から今も頑張って学校に行って、バイトに行って、こうやって家にちゃんと戻ってて。私、そんなどんちゃんのことかっこいいと思うし、好きだよ」

それを言うためにわざわざ来たのかよ。
ラインをすればいいのに。走って、息切れまでして・・・もう夜遅いっていうのに・・・

「じゃあね」

あみは走って帰っていく。

「あみー!ありがとー」

俺がそう叫ぶと振り返って笑顔で手を振った。

中学の時からそう、あみは優しくて、かわいくて、話を聞いてくれて、自分の思ったことを言ってくれる。

俺は、そんなあみが







好きだ。

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