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「えーん」
また、この夢……
僕は、泣いていた。
このころの僕は、泣けばこれ以上嫌なことが起きないと思っていた。
でも、どうして泣いているんだろう?
「えーん」
「ほら、泣かないの……」
そう言って、女の子は僕にハンカチを渡した。
僕は、そのハンカチを受け取ると遠くへ投げた。
「えーん」
そして、僕は再び泣き続ける。
女の子は、そのハンカチを拾いに行くと再び僕にハンカチを渡した。
そして僕は、またハンカチを遠くへ投げた。
そんな、やりとりを何度も何度も繰り返した。
女の子は、とうとう泣き出してしまった。
「うわ~ん」
「えーん」
ふたりの泣き声だけが部屋中にこだまする。
そう。
これが、瞳との初めての出会いだった。