第3回「バターンバターンバターンバターン!」
ズバァン!
「突然だが、今日は一限目から五限目まですべて体育になった! だが、このクラスはプールを使用しない!」
「何ィッ! 四十度近い気温なのに、そんな横暴が許されるのか?」
「ねっ、チューしよう?」
チュゥゥゥゥゥッ!
「誘われたもんだから、ついキスしちまったぜ。荒神さんの唇の柔らかさ、嫌いじゃない」
「いとも簡単に唇を奪うとは……これがナイトメア・アクションだというのか!」
「ええい、今日から突然この新屋敷高校にやってきた謎の体育教師、インパール藤岡を無視することは許さんぞ!」
「藤岡家一同への風評被害な名前だな!」
「※この物語は実在の人物、地名とは一切関係がありません」
「さすが外道女神だ。こういう時のフォローが早い」
バターンバターンバターンバターン!
「くっ、インパール藤岡のやつめ、せっかくムールナが中和してくれたのに、今度は死の行進的な擬音を出してやがる!」
「ふふふ、貴様らはこれからみっちりと鍛えられるのだ。血と汗と涙だけが未来を作るのだと知るがいい」
「血と汗と涙が必要なのはオマハビーチだけだ! 俺はこのクーラーの効いた教室から出るつもりはないね。ありがとう教育委員会。別の自治体だったら、この教室も室温が40度くらいになってたかもしれないぜ」
フオオオオオオ……。
「うおっ! 今まで教室でくつろいでいたはずが、灼熱のグラウンドに強制転移させられたッ!」
「インパール藤岡……あいつ、恐ろしいやつだ。どうやらこの世の人間ではないらしいな」
「そうとも。体育教師は世を忍ぶ仮の姿。実のところは死神としてのノルマ達成に追われて、仕方なくそこらへんの学生を熱中症にしてあの世に連れて行こうと考えている社畜よ!」
「最低の理由だな!」
「黙れ! お前たちは働くということがどれほど大変かわかっていないんだ。減点はあっても加点はない。それが日本式査定だ!」
「海外に出ろよ」
「住み慣れた土地から、そう簡単に離れられるものではないのだよ」
ジャキィン!
「俺はなんとしても涼しい教室に帰らせてもらうぜ、インパール藤岡」
「ふふ、いいポーズだ、ナイトメア白水。女神たる私の乳を揉みまくるだけのことはある」
「しょせん死神になりたての小僧に、この俺が負けるはずがない」
「ナイトメア白水、インパール藤岡。勝つのはいったいどちらなのでしょうか! 実況はアナウンス部の性からやらずにはいられない、荒神美奈でお届けします!」