第1回「キンキンキンキン!」
「私は擬音の女神、ムールナである」
「祇園の女神! すごい! お祭りっぽい! おっぱいもすごい!」
「祇園祭の祇園ではない。オノマトペの方の祇園だ。あとセクハラ減点は記録しておくからな」
「で、その女神様が俺に何用で」
「詳細は省くが、あと五秒後に君は死ぬ」
「五秒って」
キキィーッ! ドカーン!
「事故死おめでとう」
「めでたくない! マジで死んだ!」
「そこで、私は君にこの刀を与える。君はこれから死神として働くのだ」
「何だか各方面から怒られそうな設定だ!」
「ちなみに、その刀の名前はエクスカリバーという」
「刀なのに?」
「エクスカリバー」
「せめてエクスカリパーにしては」
「パクリじゃないか」
ガビーン!
「ここまでやっといて、オリジナルと言い張るおつもり?」
「おつもり」
「熱盛ィ!」
「話を聞け」
「はい」
「死神は農耕の神でもある。命を刈り取るのが君の役目だ」
「うん、相変わらず掟破りの地元走りって感じのところを突いてきますね」
「もちろん、貧弱現代ボーイの君程度がいきなりシャンシャカ動けるとも思っていない。よって、君には特殊能力を与えている。それが『五秒後の世界』だ」
むむむむぅ~ん。
「それ、村上龍ですよね? あれは『五分後の世界』だけど」
「君はあらゆる事物に対して、五秒間だけ先行して行動することができる」
「本当だ! おっぱい揉めた!」
「死ね」
ズダダダダダダダ!
「俺は蜂の巣になった。スイーツ(笑)」
「女神の乳を揉んだのに存在が残っているだけありがたいと思え」
「そういや、なんで俺は生きているんだ?」
「死んでいるんだよ。正確には、君は生死の狭間に漂う存在となった」
「精子の狭間……」
「口を縫い合わせてキャベツで巻いてコトコト煮てやろうか」
「すみませんでした」
「これが君の二つ目の能力、『ギャグ時空』だ」
「なんのひねりもねぇ」
「ただし、この能力には欠点がある。君がシリアスに行動すればするほど、傷の回復が遅くなる。いくら頑丈な死神といえど、死にすぎたら死ぬ」
「死ぬって概念がどんどん安くなっていくなあ」
はてな?
「そういえば、俺はこれから何をすればいいんです」
「今、この世界には危機が近づいている。君はその恐るべき力から、仲間たちを守るんだ」
「あのー」
「どうした」
「俺、わりと友達いないっていうか、ぼっちなんですが」
「わかった。いいことを教えてやろう。命の危機を救えば、どんなやつも一発で友達になれる」
「もっと平和的なやり方はないんですかね」
「見つけたぞ、ナイトメア白水! 死神法違反で、お前を斬る!」
「なんかいきなり女の子に絡まれたんですが」
「あれは君を殺しに来たんだ。返り討ちにしてやるといい」
「そう言われても」
「君には擬音の力を与えている。より強い擬音を思い浮かべて、バッサバッサと斬り倒すんだ」
キンキンキンキン!
「ぐうっ、防戦一方!」
「ナイトメア白水、お前のようなやつが生きていちゃいけないんだよ!」
「その地方のプロレスラーみたいな名前やめてくれない?」
「ああ、私が歴史を改変したから、今、君は戸籍でもナイトメア白水になっているぞ」
「ひでぇ」
キンキンキンキン!
「絶体絶命だ! こんな可愛い子を斬るなんて、俺にはできない」
「擬音だ! どんな時も擬音で切り抜けろ!」
「そうか……よし!」
むにゅ~ん♪
コリコリコリコリ!
「うへはーっ!」
「ふう、謎の少女の弱点が両乳首こねくり回しで助かったぜ」
「よくやった。これで私が教えることは何もない」
すぅっ……。
「師匠! 体が消えてますよ!」
「私はいつでもお前のことを見守っているぞ……」
「あっ、ちょっと濃くなった! 消えるなら消えてください、師匠!」
「まあ、私は神だから、ちょっと演出しただけなんだよね」
「こいつぅ~」
「ハハハハ、神にツッコミとはいい度胸だ」
シュビビビビビビビ!
「ぐえー!」
「だが、いい傾向だ。ナイトメア白水よ、今こそ旅立て。たまたま五秒後に死ぬ君を見かけて、興味本位で能力を与えた私の恩を忘れるでないぞ」
「改名された上におかしな争いに巻き込まれた……。俺はあんたを恨む! 今日から俺は、復讐の鬼ナイトメア白水だ!」
キンキンキンキン!
「今の君では私には勝てんよ」
ズバビギューン!
「斬りながらビームライフルになるなんて聞いてねえよ……」
「一度は許そう。だが、二度目はないぞ。それでもいいのなら、這い上がってくるといい」