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027 深まる謎

深まる謎

「で、ベルニーニさん所の話になるんだけれどね」

「ベルニーニ、ベルのところはね、あんた 旅人さん「ミキです。ミキと呼んでください。」あぁ、ミキちゃんね。ミキちゃんも ベルの所から来たんなら解ると思うけど、わりと大きな宿屋だって思ったでしょ?」

「えぇ、まぁ」
「厩(うまや)も大きかったですし、馬車置き場も十台くらいは 楽に停められそうな規模でしたしね」

「そうだろう、そうだろう、で それだけの規模があるにもかかわらず、いまじゃ閑古鳥が鳴いてる状態なのよ。」

「支援の方は?」

「それがね、このクラスの規模だとギリギリ大規模な宿屋だってみられちまってね。支援が 受けられなかったみたいなんだよ。」

(ギリギリの範囲ってやつなのかな。そういえば 自転車通学を認めるか認めないか。その境が二キロメートルだったっけ。うちは、その二キロに満たないってされて歩きだったなぁ。こればかりは 難しいね)などとミキが回想していると

「でもね、そりゃまぁ 仕方ないって諦めも着く。それなりには やっていけてたんだ。今度はね、この宿屋を売れって言ってきたんだよ。それも 新しく来た代官がね」

「それはまた…妙な話ですね」

「実はね、こんな話があるんだよ。ベルんところから うちに来るまでに迷ってしまうあんたじゃ解りづらいかもしんないけど、実は ベルのところの宿と 公営の馬車置き場って案外近いところにあるんだよ」

「うーん、そうなんですか?そうなんですね」と言いながら頭に手をやろうとしてしまうミキである。間違いなく解っていなかったのだろう、照れ隠しに頭を搔こうとしてフードを被ってるのに気がついたという感じですね。

「うん、まぁ。実際近いんだけどね。で、公営の馬車置き場が手狭になってきたと言うことで ベルの宿も取り壊してしまって 全面馬車置き場にして公営の第二馬車置き場しようってことなんだ」
「でもね、どう考えたっておかしいんだよ、たしかにこの町にやってくる旅人や行商人には 安く安全に馬車を停められる場所が増えるのは いいことなんだろうけど。大手の商人たちは それなりに自衛の手段を持ってるんだ。傭兵を雇ったり、別に馬車を守るためだけじゃなく道中の護衛もかねてさ。つまり大手の商人にとっては 公営であろうと民間であろう大して変わらないってことさね。そして 中小の商人や普通の旅人さんだけなら いまのままの設備でも十分やっていけるってこと。ベルの所を取り壊す必要なんてなんにもないんだ」

「だから あたしたち 町の町長と一緒に陳情に行ったわけよ。ところが ケンモホロロに追い返されたってわけ。少なくとも先代の代官のときには そんなこと一度もなかったんだ。民の言葉を蔑ろにしなかったよ。ちゃんと耳を傾けてくれた。はぁ~、どうしてあんな奴が代官になって来ちまったたんだろうね」

「いままでの話をまとめると、こういうことですかね」

一、あるとき一軒の宿屋に盗賊が押し入った。荷馬車ごと消えてしまう。
二、同様の事件が続いたため、対抗策として、公営の馬車預かり所を設置した。
三、公営の馬車預かり所が人気、中小規模の宿屋の経営支援を行う。
ここまでが 先代代官の行ったこと
四、代官が交代、宿屋の支援を打ち切る
五、中央にある公営馬車預かり所が手狭になった
六、新たに場所を欲してベルニーニの宿屋に目をつける

こうしてみると、問題となるのはベルニーニさんの宿が 現在の馬車預かり所から近いという理由で、そこを売れという話が問題点のようですね。でも 売れっていうことは それなりのお金を出してくれるのでしょう?そうであるなら 感情論は別として問題ないような気もするのですが」

「はんっ!そこが あの鬼代官のいけ好かないところさね。
『公共の為にこの場所を利用するという目的の為なのだから、本来なら喜んで土地を差し出せばいいものを 有り難くも立退き料を支払うといっておるのだ。さっさと 手放せ、』ときたもんだ。おまけに その時提示された金額は 僅か金貨五十枚だよ。たった金貨五十枚ぽっちで、あの土地を手放せって そんな馬鹿な話、認められるかってんだ」
「そんなじゃ、従業員への給金分払って、諸々支払いを済ませたら 何にも残らないじゃないか。あらたな商いの元手にもなりゃしないってもんだ。まったく あんの腐れ代官!!」

(金貨一枚は、確か元の世界での通貨だと十万円くらいの価値になるんだったよね。ということは あの土地を五百万円で 売れってことですか。いまだこちらの物価には、慣れていませんが。この辺りの土地相場だと…確か)

「…キちゃん、ミキちゃん、ちょいとミキちゃん、どうしたんだい?」

「あっ、はい。すみません。この辺りの相場ってどのくらいかなって思ってしまって」

「実際、ベルの宿とその周辺の土地を売るとしたら 金貨800じゃ足りないよ」

「金貨八百っ!(およそ八千万円)、それがどうして五十枚だなんて話になるんでしょうね、人を馬鹿にするにもほどがありますね」

「そういうこったよ、この国はね、この町はね、陛下がお造りになったこの国は、民も上に立つものもみな協力してきたんだよ。中には 身分至上主義な奴らもいたけどさ。そういったやつらは、今じゃほとんどいやしない。それなのに…あんの腐れ代官ときたら」

「そういえば、先代の代官は どうされたんです?」

「それがねぇ、なんでも重い病にかかっちまってね。歩くのも困難になっちまったって話だよ、最後にあったときは、そんな感じしなかったんだけどねぇ」

「それって、いつ頃の話なんでしょう」

「そうさね、支援のお礼に伺ってしばらくしてからのことだから、二年ほど前かね、でその後ぐらいかね、今の代官に変わったのは」

「ちなみに今の代官って ずっとこの町に?」

「いやね、それが ある日突然やってきてね、われが 新しく着任した代官であるってね」

「つかぬ事を うかがいますが その時に着任の辞令なんてご覧になった方は?」

「うん?なんだい そりゃ」

「あたしゃ、見たことないねぇ、町長(まちおさ)なら見たかもしれないねぇ」
「なんなら町長(まちおさ)に確認してみるかい?」

「そうですね、いまは いいでしょう」

「って、なんだい?あんた ほんとにお貴族様じゃないんだろうね」

「あはっ、違いますよぉ、僕が そんな風に見えますか?」

「いんや、そんな風には見えないけど、えらく詳しいじゃないかね」

「まぁ、皇都で商いをしていれば 色々とあるんですよ」

「皇都ってのも大変なんだねぇ」

「お母さ~ん、表の方に…たぶん その人を訪ねてきたんだって思うお客さんが見えられてるんだけど?」

「うん?そうかい、入ってもらいな」

「ダンナ」、「若旦那」
「探しましたぜ」

「あっ!」

「あっ!じゃないですぜ、ちょいと散歩に出かけるって あと小物を見たいからって…いったいいつまで時間かかってるんです?」

「ごめんね、ちょっと時間が経っているの忘れてた」

「おやまぁ、あんたたちも こんな可愛らしい若旦那がいなくなって慌てたんだろうけど そうまくし立てて怒っちゃいけないよ、色々あるんだよ、色々」

「「はぁ」」

「おかみさん、いろいろとお聞かせいただき 今日はありがとうございました、さっきのつづき、またお伺いしても?」

「あぁ、うちのお客さんなら 問題ないよ」と暗に、何か買ってけって示唆する小物屋の店主である。扱っているものは小物でも、商人とすればなかなかに大物さんのようですね。

「それじゃ、今日は ほんとうにありがとうございました」

「あぁ、あんたみたいなめんこい()なら、いつでも来てくれていいんだよ」

なんか最後の方の語感が 違ってるような気がして釈然としないミキであった。



「それで、何か 解ったんですかい?、若旦那が何でもないのにいつまでも連絡もよこさず、帰ってこないなんてのは、ないって思うんですがね」

「ええ、それなんですがね…」

と先ほど仕入れた話を ヒサとタケの二人にも話すのであった。



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