014 準備不足
まだまだ準備が足りないよ
「じゃ、おれたちゃ、ここで待ってっから」
「あれ、中に入らないの?」
「いや、まぁ…なんだ。着る服選ぶんだろ?時間かかるだろうしよ。」
「それに 俺たちみたいな二人組が入るとな…営業妨害だって…」
「はぁ、そうですか。では すみませんけど しばらくお待ち願いますね」
「では、リコッタさん」
「うん、あたしも 一緒に行く~?」
「えぇ、どんな服が 一般的なのか 見当つかないので 出来ればお願いしたいかと」
「いいよ~、一緒にいこう」
◇
「いらっしゃいませ、今日は どういったご用件…って リコッタちゃんじゃないの」
「ちわ~、今日はね~ こっちのミキちゃんって言うんだけど この子に似合った服を選びに来たんだよ~」
「これは、これは ご紹介いただけるのですね。ありがとうね」と言いながら 既に どういった装いがミキにあうか 上から下まで見ている店員A…「サシェさん、そんなに見つめてしまってミキちゃんが照れっ照れになってしまってるよ~」
「あらあら、ごめんなさいね。こんな別嬪さん、とんとお目にかかったことなくてねぇ」
「「あぁ、やっぱり」」
「サシェさん、この子 男の子なんだよ~」
「えっ?、またまた~。リコッタちゃんてば 冗談が 好きね。ホント」
「町の中でいろいろと見て回るのに、この子、官衣みたいなのしか持ってなくてね~、で とりあえずうちの食堂の服を着せて 出てきたのよ~」
「じゃぁ、こちらお城勤めなのかい?っていうか ほんとに?ほんとのホントに男の子なの?」
「「うんうん」」
「はぁ~、世の中にゃ すごい別嬪さんな男の子がいたもんだね~」
「うん、じゃぁ 腕によりをかけて この子に似合う服を見繕えばいいわけだね、まかしとき」
「いえ、その町をあるくのに とりあえずは、主に皇都とか皇都周辺の町や村を見て回るのに 違和感のないような服装をお願いしたいのですが」
「うーん、そうねぇ ミキちゃんっていったわね」
「はい」
「仕事の関係なのかい?」
「仕事っていうか そうですね。仕事と あとは わたしの趣味でしょうか」
「皇都に来てから三年、ほとんどをお城の中で過ごしてきましたので この皇都やその周辺のの人々の暮らしぶりを見てみたいっていうのもあるんです、あとは 純粋に個人的なことです」
「なら、動きやすくて そうね~ 変に威圧を与えないような服装がいいのかねぇ。皇都や周辺の町はいいんだけどね。皇都から離れて行けば行くほど 人の暮らしもきつくなってしまうものね」
「もちろんルー、陛下が、いろいろと頑張ってくれてるのは わかってるんだけどね」
「官たちの中には、陛下の目が届かないようなところだと たんまに いるんだよ。もしかして あんた そういうのを調べる?って目的があったりするのかな」
「あは、あはは~ ないですないです。わたしなんて只の小間使いみたいなものですから」(なんて鋭い、この人 ほんとにただの服屋の店員?)
「そうそう、あたしゃこの店のオーナーで、陛下とは顔見知りなのさ」
「(かぁさま~)そ・そうなんです?」
(そういえば、あれも三年くらい前だったかね、リョージュンとクラリッサが やってきて 子どもの服を買いに来たのは…って まさかね)
「そうなんだよ」
「えっ?うそ~、サシェさんって陛下と顔見知りだったの?」
「あぁ、まぁ そんなところ」
「よし、それじゃ サイズを測らなくちゃね」
「サイズですか?わかりました」
「じゃぁ、こっちに来ておくれ。ちょっと、エクリュ。こちらの方の採寸をお願いね」
「かしこまりました、オーナー」
「これから採寸させていただきます、わたくし エクリュと申します」
「はじめまして、ミキと言います。お願いしますね」
「では、こちらへ どうぞ」
◇
「で、あんたが 案内してくるなんてね~、ショコラに頼まれたのかい」
「そうです~、ショコラさんも わりと気にいってるようで」
「どんな子なんだい?それにしても うちで作った衣装を 見事にきこなしてるね~ あたしゃ いまでも信じられないんだけど。」
「ですよね~、わたしも~ 今日初めてしりました。二年半くらいの付き合いなんですけどね~」
「はぁ?いままで 気付かなかったのかい」
「いえね、いっつも僕っていうから あぁ 慣れるまでは 「わたし」って 言ってたんですけど~。だから 僕っ娘って ほんとにいるんだね~って思ってたんですよ~」
「いい子ですよ~、困ってる人が いたら見過ごせないようですし、お人好しだし~」と言って 外で待ってる二人組を見るリコッタ。
「ありゃ、どうしたんだい?」
「ここに 来るまでに色々あったんですよ~」
と言って、服屋へ来るまでの出来事を語るリコッタ。
「あっはっはっは、そりゃ お人好しだね~、それにしても 護衛として雇ったか」
「ありゃ、いい拾いもんだ。元は、四人いたんだろ?そりゃ たぶん『雷鳴の響鬼』っていう腕利きの傭兵だよ。」
「うっそぉ~、『雷鳴の響鬼』っていえば、腕っ節上等、依頼達成率十割、悪党は、ぜったいに許さない、正義の味方みたいな傭兵グループじゃん。それが あんな厳ついおっさん達だなんて。いやぁ、おっさんじゃぁ なかったわ~。三人が二十代後半と一人が24だったから。もっとイケメンかと思ってた~、がっかりだよ」
「あんた…」そう言いながら 可哀想なものを見る目をするサシェであった。
「まぁ、それは ともかくいい拾いもんだよ。ほんとに」
そろそr、採寸も終わる頃だろうね
◇
「じゃぁ、こっちの服とこっちのあわせて三着、それとオーダーメイドが三着でいいね?、支払いは どうするんだい。まぁ こっちの三着は金貨二枚だけど、オーダーメイドの方はね。見た目には 質素だけど 動きやすさ、それに防刃加工だっけ?それに使う素材でかなりするんだけど…ちょいとお待ちよ」……「うん、素材の方は 金貨五十枚だね。そうさね、素材の代金と職人の手間賃に金貨五枚で 全部あわせて五十七枚で どうだい?」
「あ、はい。えっと これって使えますか?」
「うん?どれどれ…(って、これは。なんてもの持たすんだい。じゃ やっぱりこの子は…ルージュの御子)はぁ、うん 使えるよ。まぁ 使える。」
(ダメだ、この子に詳しい話もせずに渡しちゃって。皇族とその関係者のみが使える皇家御用達のカードじゃないさ、こんなものどこでもかしこでも見せちゃいらぬトラブルを呼び込んでしまうよ)
「ちょいと、エクリュ、お茶を持ってきておくれでないか。あとリコッタ、外の二人にこれを 持って行っておやりよ、あんたも飲んでいいから」
「おっ!これは。クンクン、ライト・エールじゃないですか~、ありがとです~」
「さて、御子さま(小声で)」
「な、何をおっしゃってるんでしょうか、サシェさん」
「いえね、こちらのカード、こちらは 恐れ多くも皇族とその関係者のみ使用できる皇家御用達の身分証明兼支払いカードになっておりまして。で これを あなたさまが お持ちになっていらっしゃるということは つまり」
「つまり?」
「いまの皇家関係者に あなたくらいの年齢の方は お一人しかいないのですよ。」
「あちゃ~、母さまめ!お披露目式が 終わったので ミキ。おまえに これを渡しておくって 気軽にポンっと渡してくるものだから…それが あれば ちょっとしたものなら買えるよ、だなんて」
「ちょいと、そっちが あんたの素かい?だだ漏れになってるけど。」
「あっ、すみません」
「にしても、あんたが ルーの子どもなんだね、うん」
「まぁ それは おいといて あんた これからも外で 買い物したりいろいろするんだろ?それなら 普段使いの小銭とかカードを用意しておいた方がいいよ」
「ありがとうございます。はぁ~ ほんとにダメダメですね」
「そうさね、ルー、陛下にあったら こう伝えておくれ。サシェが 明日の夜会いに行くって、あとそのときに あんたも居てくれると助かるね」
「それは、どういう?」
「うん、まぁ そう伝えてくれればいいから。」
「はい、そう伝えておきますね」
なんだか 妙な雰囲気になってきましたが まだまだ続きます。