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013 どうしてこうなった

どうしてこうなった?

前回、道中で一緒になった ヒサ、タケ、マサ、ヒデの四人とともに、リコッタに連れられてショコラの店まで やってきたミキ。

「そっち、五番テーブルに運んで、でそれが終わったら 二番テーブルを片付けてちょうだい。んで あんた達は、何が出来る?」
「おれは、皿洗いくらいかな」とヒサ。

「おれも皿洗いくらいなら出来るぜ」とタケ

「…料理。料理が作れる」とマサ。

「うーん、厨房の方は、あんた 下処理は出来るかい?」

「…うん」

「じゃぁ 厨房に入って あのオヤジに 指示を仰ぎな」

「うん、あんたは ウエイターな。正直 人数が足りないんだよ。なんで あっちで…うちの制服に着替えてきな」

「わかりました。」と、ヒデ。

「なんか、ごめんね~」と申し訳なさそうに手を合わせるリコッタ。

「うん?なんだいうちの店が 忙しいと思ってお城の食堂からショコラさんに言われて 人員連れてきたんじゃないのかい」とこの店のホールを担当してるロール。

「違いますってば、ロールさん。あの子、ミキちゃんにうちで、服を着せて それから服屋さんに案内するようショコラさんに頼まれたんですよ~。で、こっちがそのお手紙」

「やばっ!あの娘 オーナーの知り合いなのかい?」

「そ~ですぅ」

「いや、でも あの娘 手伝いにきた応援かい?って言ったら 何をすればいいんです?って」
「あぁ、どうしよぅ」

「ミキちゃんが…ったく。あの子、変なところで気を回すからね~」

とショコラのお店の関係者ふたりが こそこそと話し合ってると…

「はい、そこ!くっちゃべってないで 急いで指示を出す、動きなさい」とミキの静かなる怒号が聞こえてきた。

「「かしこまりました」」こぇ~

「あたしだけ、逃げて帰る訳にはいかないよ~ね~」

「あたりまえだよ」



「ようやく落ち着いたようね~」

「一時は、どうなることかと思ったわよ」
「あんたたち、もうあがっていいわよ~、それから あんた すまなかったね。足止めみたくなっちゃってさ。」

「いえいえ、久しぶりに いい運動になりましたし ちょっと懐かしかったかも」

「あっ、やっぱ経験あるのかい?」

「えぇ、まぁ」

「あんたさえ よけりゃ時々手伝ってくれてもいいんだよ」

「あは…それは まぁ」

「無理いっちゃダメだよ~。ミキちゃんはぁ、お城の仕事もあるんだからぁ」

「そうかい、でも 気が向いたら いつでもきなよ。あんたなら いつでも大歓迎さ」

「「「おつかれした」」」
「…」

「あいよ、お疲れさん」

「そうそう、これ。少ないけど とっときな。勘違いでこき使った分 色は、つけさせてもらったよ」

「「「「ありがとうございます」」」」

「いいんですか」

「もらっておきな~」

「では、ありがたく」

「で、そっちのマサだっけ?どうしたんだい」

「おら、やっぱ料理人になりてぇ」
「「「やっぱり」」」

「まぁ、こいつ村にいるときから料理人になるのが 夢でな。けど おれたちの村じゃぁ たかがしれてる。で、いろいろ渡り歩いてるときにも宿屋とかの厨房に頼み込んで 時々 料理の手伝いさせてもらってたんだよ」

「 ~い、おぉ~い、おぅ、まだ店んなかにいたんだな。よかったぜ」

「どうしたんだい、おやっさん。」

「料理長って呼べとなんど言ったらわかるんだい、って まぁ そりゃいい」
「おれが、用事があんのは、そこのマサってやつさ」そう言うと 料理長は マサの目を見つめながら、「おめぇさん、うちで働く気は、ねぇかい」と。

「ほ・ほんとうでずか」(噛んだ)

「あぁ、ほんとうだ。さっきは 何言ってんだてめぇって 思ったが おめぇの最後に作ったまかないな、ありゃぁ うめかったぜ。まだまだ ところどころ荒削りだが おめぇなら いっぱしの料理人になれる」

「おい、良かったじゃねぇか。マサ」「マサよぉ」「マサさん!」

「いいんかな、おら 抜けちまって…いいんかな」

「おいおい、だいたいがこの皇都に出てきたのだって 職探しもかねてたじゃねぇか」

「いいんだよ、なぁ みんな」
「あぁ、マサ兄」
「マサさん」
「おっ!久々に出たな。タケのマサ兄呼び」
「はは」「ふふ」
寡黙な男、マサは 実際の年齢より落ち着いて見られることがたたあったのである。

「そんじゃ俺たちから。料理長さん、こいつ、マサのことを宜しくおねがいしやす」
「「お願いします」」
ちょっと涙目になりながらも 親友の、兄弟分の新たな一歩に喜び面々である。

「料理長どの、これから よろしくお願いします」

「あぁ、まかせときな」

「なんだかあっちは、 いい話にまとまったようだね。じゃ あたしからも」
「ヒデだったかね、あんたもよけりゃ うちの店でウエイターやってみないかい」

「えっ!おれっすか」

「あんた、他のメンツと違って 強面は、強面なんだが 凄みもあるし それでいて 礼儀の方もわきまえてる。まぁ ぶっちゃけ うちの用心棒兼ウエイターだ」
「この店はね、皇都でも一番のレストランだと自負してる。だがね そんなだから 時折妙ないちゃもんをつけてくる連中もいるんだよ。で、店んなか見てもらうとわかると思うけど 若い女の子が多いんだよ、そんな娘たちだけだとね…心許ないときもあんだよ」

「そうっすか、ヒサさん、タケさん」

「「あいよ、がんばってきな」」

「ありがとうございます」

「なんでぃ、なんでぃ ずっと会えない訳じゃないんだ。そう湿気たツラしなさんなや」
「そうだぞ、おれたちゃ どんだけ離れていても 仲間だろ」

「それに マサもこの店にいるってことだしよ」

「そう…ですね」
「「そうだよ」」
「んだんだ」


「けど ほんっとごめんね~、ミキちゃん」

「気にしないでくださいな」

「「ところで、あなた方(あんたたち)、どこまで着いてくる気」なのでしょう」

「いや、なんか離れるきっかけをなくしちまったっていうか、急にメンツが減ったもんでよ」
「うん、そうだな」

「もうしばらく 一緒にいさせてもらって かまわないかなっと」

「はぁ、仕方ないですね、では 服屋までの護衛をお願いします」

「ちょっ、ミキちゃん」

「なんです?」

「いいの?」

「はい、なんだかとってもいいものを見られた気がしまして、それに この人達、ぜんっぜん悪い人たちじゃなくて むしろ…」

「むしろ?」

「底抜けのお人好し!気に入りました」

「ミキちゃん」
「「嬢ちゃん」」

あんたの方こそ、お人好しがすぎると 三人の気持ちが一致した瞬間であった。


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