004 三年経ちました
三年経ちました
離宮での暮らしをね ここで熟々と書き綴っても それは まぁ それで 面白いのかもしれないけど、まぁ やっていたことと言えば、この大陸の歴史とか成り立ち、あとルージュ・エリステルの子どもとしての立ち居振る舞い、これは まぁ 仕方ないよね?陛下だもの。あと やはり この世界で生きていくには 身を守る事が出来ないとってことで 武術、主に 剣術と無手での戦い方。あと あったんですよ!魔法が。この世界には、まぁ 竜なんていう地上最強生物が 存在してる時点で 魔法があっても不思議じゃないよね?
こう考えてみると、修行期間が 短いような気もするけど 地球での 未来自身が 古武術の嗜みがあったってこと、戦うすべは 既に ある程度持っていた事からで主に座学に その時間を費やしたって話だったりする。あとは、こちらの武具に慣れる、ってこと。あと 魔法についての座学と訓練だね。
ところがね 不思議なことに 魔法についても あとこの世界のおおまかな流れについても、ミキ曰く、まるで知っていたことをトレースしているような感覚で 再確認?している感じだったそうな。おそらく 命玉を取り込んだことに そのあたりの理由があるんじゃないかって話だ。
「996,997,998,999,せーーーーん!っと、ふぃ~」
「しっかし おまえさんも よく毎日続くなぁ。」
「そうは 言ってもこっちの剣術は まだ初めて三年しか経ってないんですよ。身体に もっと馴染ませなくちゃ」
「いやいやいや、ミキちゃんよぉ それ本気で言ってる?この国の最強剣士って言われてる近衛騎士団長さまを 瞬殺した仮面の美少女剣士ってのが 先だっての武道大会に現れたってもっぱらの話だぜ」
「さぁ 誰のことでしょうね」
仮面の美少女剣士、もちろん ミキのことである。
「近衛騎士団ってさ、普段から主に対人戦を想定してるでしょ、けど 僕の動きは、対人・対魔物 向かってくる相手すべてを想定した動きだから 団長さんには、トリッキーな動きにみえてしまっただけですよ。きっと」
「まぁ でも これで 母さまと取り決めた武道大会で前年度優勝の団長さんに勝利するっていう件は、果たしたから。これで 僕の一人歩きは 認めてもらえるってことです、なんせ こっちの世界に 来て 一ヶ月近く眠りについて その後は ほぼ離宮で過ごしたでしょう?ホントの意味で、この世界のこと、うぅんこの国のことも 王都のことも 僕は、何にも知らないんです…それに」
「それに?」
「せっかく 異世界に来たんだもの、いろいろ観て回りたいじゃないですか!!」
「おまっ、最後のがホントの理由だろ、ったく…。まぁいい あっ!もう 袖あげていいぞ」
「ありがとうございます、リュージュンさん」
「うむ、脈の乱れもなしっと、ほんと おめぇさんは 変わらないなぁ」
「え、なんでしょう」
「あぁ、まぁ気にすんな」
陛下の言ったとおり、こいつなら…な って思えてくるじゃねぇか
「いま、この国は ほぼ安定して民が暮らせるようになってきてる、ここ皇都では さほど貧しい暮らしをしてるものも見かけなくなった。とはいえ、あくまで さほど・だ。それに 皇都を離れ、周辺の町や村へ行くとな、まだまだ苦境に立たされている民たちもいることであろう」
「我はな、リョージュン。もう人々が 貧困に苦しみ、病に苦しみ 戦乱に苦しみ 命を落としていく そんな有り様を見るのはいやなのじゃ」
「ミキなら、ミキならば きっと…死の淵にあって、なおその強い意志宿したあの瞳。我はのぉミキならば 必ず この国、この大陸に 新たな風を 巻き起こしてくれるんじゃないかと そう信じてるのじゃよ。じゃから あのとき 命玉を使った、蘇生の儀をとりおこなった我の判断を褒めてやりたいくらいじゃ」
「それにのぉ 召喚に巻き込まれたものが、元の世界に帰れたという話は 我が生きてきた年月の中で一度もない、あやつは、この世界で 生きていくしかないのじゃ。なればこそ あやつの後ろ盾になってやりたかった、あやつが この世界のどこへ行ったとしても帰れる場所を作ってやりたかった」
なかば 強引とも思えるミキの我の息子宣言には、そんな考えがあったのか…
「ルージュ、おまえそこまであの少年のことを…」
ミキが 離宮暮らしを始めて しばらく経ったころに 話したことをいまさらながらに思い出したリョージュンであった。
「さて、これからどうする?」
「そうですね 今日の鍛錬は 終わりましたし ぼちぼち一人歩きの計画でも 立てましょうかね、っとその前に 母さまに 許可をもらいにいかなくちゃですね」
「いや、その前に おまえの お披露目の式典があるはずだ、で、許可の方は まだもらってなかったのか」
「やっぱり お披露目の式典って やらなくちゃダメ?なのかな」
「そりゃそうだろ、今後どうなるかは、ともかく長らくいなかった竜皇国、そしてリンドブルム帝国皇帝陛下の跡継ぎが 誕生したんだ、おまえさんは、どう思ってるか知らんが この国の民にとって こんなに喜ばしいことはないんだよ」
「まぁ、ここは ひとつ腹を括って お披露目されてこいや」
「はぁ、まぁ それは…そうですね。ところで お披露目の式典って いつやるのでしょう?」
「それなんだが たしか…」
「ミキさま~!ミキさま~! まだこちらに おいでですか?」
ありゃ、クラリッサの声だ
「は~い、まだ いますよ~」
「あぁ、よかった。ミキさま 急いで、陛下の執務室まで いらしてください。お披露目式のことで 日程とか、段取りとか打ち合わせをしなくちゃなのです、リュージュさんも お越しくださいとのことですよ」
「はぁ、お披露目式からは逃げられない」