002 目覚めましたら
目覚めたら
「ふぁぁ~、よく寝た」
すっきりした気持ちで 目が覚めた、こんな爽快な気分で目覚めたのはいつ以来だろう
って、ここどこ?見たことのない壁、見たことのない置物、見たことのない人
「あれ、ここどこ?」
「あぁ、やっとお目覚めになったのですね、いますぐ医術師を喚んで参りますので そのままお待ちくださいね」
そう言うと見たことのない人は、いま僕がいる部屋から あっという間にいなくなった。『いじゅつし』って言ってたけど僕どこか悪かったのかな、そもそもなんで こんなところで寝てたんだろう?えっと昨日は、授業終わった後 ドラッグストアで 買い物してその後… あれっ?その後どうしたんだっけ、思い出せないや う~ん 何かを見たんだよ 何かを…などと僕が昨日のことを思い出そうとしていると装飾のない白いローブをまとった「いじゅつし」と思われる人と一緒に 先ほどの見たことのない人(女の人)が やってきた
「ちょっと見させてもらうよ、すっかり大丈夫だとは思うけど。君は、かれこれ一ヶ月近く眠っていたんだ、どこかおかしく感じるところはないかな?」
ちょっと待って、今なんて言った、この人、一ヶ月ってどういうこと?
「すみません、今一ヶ月近く眠っていたって おっしゃいましたか?」
「うむ、確かに一ヶ月近くと言ったな、君は何も覚えていないのかな」
「えぇ、目が覚めたら、見たこともない壁、見たこともない置物、そして 見たこともない人がいらして。そして わたし自身は、昨日のことを思い出そうとしていたのですが 途中までのことは、思い出せたのですが その後のことがどうしてもまだ思い出せずにいて、で ほんとうに一ヶ月近く眠っていたのですか?何度も伺ってすみませんけど」
うーん、これは 陛下をお呼びした方が いいかもしれんな
「少し待っていてくれるかな、いま ここに 君を助けた、いや君の命の恩人といえる方をお呼びしてくるから…その方を交えて話をした方が よいかもしれん」
「すまんが、え~っとたしか君は 陛下のお世話係のク・ そう クラリッサだったかな?すまないがこちらに陛下をおよびしていただけるかな」
「かしこまりました、ただちに」
「で、だ 君の脈をとらせてもらうよ、ちょっと失礼」
医術師(たぶんだけどお医者さん?)、の人が 僕の脈を測る。
「うん、脈は 安定してるようだし 診たところ熱もないようだね。見た目には これといって問題ないようだ…さて 陛下は まだかな」
「あのぉ すみません、先ほどから おっしゃってる へいかとは どなたのことでしょう?」
「うん?あぁ そっか 君は、知らないんだったね。一言で言うと この国、いや この大陸で いちばん偉い人…かな」
「も・もしかして 国王さま?」
「うん?まぁ 似たようなものかな。この国、竜皇国皇帝・ルージュ・エリステルさまのことだよ、さて 陛下が いらっしゃるまで もう少し時間が かかるだろう。君、喉は、かわいていないかな」
「えぇ、少し乾いているようです」
ほんとに 一ヶ月も眠ったままなら もっと体力とか落ちていると思うのだけれど、あまりお腹も減ってる感じがしないんだよなぁ。
「うん、じゃぁ ちょっと待っててくれたまえ、お茶を 淹れよう。」
「いえ、そんな、おい・医術師さま?に お茶を淹れていただくなんて」
「いやいや、遠慮しなくていい、それに お茶を淹れるのは 結構得意なんだ。それに お茶とは、言ったけれど これは 薬も兼ねてるからね」
「はい…、では 遠慮なくいただきます」
「あぁ、そうだった 自己紹介が まだだったね。わたしは この宮廷の中で医術師をしているリョージュンという、よろしくだ」
「あっ、はい わたしは…」「ほい、お茶が入ったよ、飲んでみて。」
「では、いただきます、ふー、ふー、ゴク…美味しい、美味しいです」
「そぉ?良かった、おや そろそろ陛下のお出ましだ」
「あぁ 君は そのままでいいから、ベッドに入ったままで大丈夫」
「いえ、それでは もうしわけ…」
「問題ない、だいいち陛下を お迎えするからと言う理由で 陛下が命を救った相手に対して ベッドから起き上がって…だなどということをしてみろ。わたしが、陛下に大目玉だ」
「はぁ、わかりました」
その直後、トントンとドアをノックする音が聞こえてきて…
「おぉ、よぉやっと目を覚ましたか。ほんとに良かった、良かった」
「蘇生の儀は成功したはずなのに、いつまでも目を覚まさんものじゃから気が気でなかったのだよ」
あぁ~、この声? 聞き覚えがある。声?というかこの優しくてあったかな声音、そうだ あのとき僕に語りかけてくれた、生きたいかと!そう あのときの声だ
「あなたさまが、わたしの命を救ってくださったのですね、ありがとうございます、ありがとうございます、あのとき わたしの頭の中?心の中?…に 直接 響くような 厳かで でも あったかくって優しい声音、間違いないです!本当に、ありがとうございます」
そっか、僕は 死にかけていたんだった。あの大きな幾何学模様の光る渦に飲み込まれて そのあと空から落っこちて…んで その途中 巨大な何かを 見たんだ。巨大な何かが そう争ってたんだ。で、地面と衝突する寸前、一瞬 身体が 軽く感じたのだけど その直後に 竜巻に巻き上げられたような感じで再び、空中へ。…その後、たしか…
うーん、その後のことが思い出せない。次に 意識を取り戻したときには、身体中が、痛みで悲鳴をあげていて そうしたら そう…今し方聞こえた声音が 頭の中に直接 語りかけてきてくれて 生きたいか?と。それに対して、僕は…
「『「死ねるか!生きたいに決まってる』と、答えたのであったな」
「そうです、って あれ 僕いま声に出していました?」
「いや、まぁ これは 後で説明しよう、して どこか具合の悪いようなところは、ないかな?え~、主の、そう言えば 主の名は まだ訊いておらなんだな。いつまでも年頃の少女に向かって 主・主とい…」
瞬間、部屋の中を 極寒の冷気が襲った
「…いま なんと仰いました!よく聞こえなかったので もう一度、仰っていただけますか!!!」
底冷えするような冷気をまとった声とともに、さきほどまでの穏やかな雰囲気を纏った患者は どこにも見当たらない。そこにいるのは、まさしく極寒の魔女、否、絶対零度の冥府の女王…(おい、作者!)
(ブルブル)
なんという威圧・なんというマナの奔流、いかに竜の命玉を取り込んだとはいえ この凄まじい威圧の力、そして かつ暴走をしていない。ここまで 彼のものに馴染むとは…。おそらくは 一ヶ月の睡眠は彼のものの身体に馴染むために必要なものであったのやもしれぬ。まずい、われと…うむ リョージュンは、ともかくこのままだとクラリッサがあぶない。
「すまぬ、もしや お主は…」
「はい、わたしの名は、未来(ミキ)、竜崎未来と申します、こちらふうに申しますと、ミキ・リュウザキでしょうか、性別は 男です」そう言い終えると 先ほどまで部屋の中を襲っていた冷気は 霧散しもとの一定温度を保たれた心地よい環境に戻っていたのであった。
あのときは、身体も ボロボロで 身につけていた衣服もボロボロ、しかし流れるような黒髪と、透き通った白い肌は まさしく女性を思わせるものであったし、いまのこの容姿も…。
「ルージュ・エリステル陛下!、何か 不穏なことをお考えでは?」
「いや、なにもありわせぬ、考えておらぬぞ、ところでだな、ミキと呼んでも?」
「はい、陛下どうぞ いかようにもお呼びくださいませ」
「うむ、では いろいろとそなたに聞きたいこともあるし これからのことについて 話をしておくこともある、何より この世界のことについて お主に 説明しておくべきこともな、体調に問題がなければ このあと時間を作ってもらえぬかのぉ」
「かしこまりました、こちらこそ いろいろとご配慮いただき有り難く存じます、何卒、よろしくお願い申し上げます」
「うむ、では クラリッサ、宰相のガストールを 晩餐の間へ喚んでおいてくれ、あとリョージュン、お主も晩餐の間へ…いや すまぬが リョージュン、ガストールは、お主に頼む、クラリッサは、ミキの支度を頼む」
「はい、陛下」
「承った」
「それでは ミキや、またあとでのぉ」
「はい」
ふぅ~、緊張したよ。あやうく暴走しかけたし、さっきのあの状況は どうしたんだろう。まぁ いろいろ含めてエリステルさまに訊ねてみよう。