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それでも、行くしかない!!

 イレーナです、幸一君との初対決。絶対勝つ!! 私は噛ませ犬なんかじゃない。負けられないんだから!!






(なるほど、悪くない戦略だな──)

 幸一の思考を重ねる。

 どうやらこの反応を見るに俺への期待値は高いようだ。新しく召喚された勇者、炎の唯一王としての名声としての……。
 だがまだ俺は戦闘を行った経験がない、自分の強さを見せつけて名声を上げるには十分な相手だという事だ。

「幸一君、手加減しないからね」

 自信満々な表情。
 恐らく自分が負けるなんてみじんも思っていないのだろう。自信にあふれた口調でそんな言葉を叫びながら利き手である右腕を上にあげる。そして……

 集いし願い、新たなる希望の力集い、無限の力解き放て!!
 アストログラフ・ソウル・スターライト・ランス

 彼女がそう叫ぶとイレーナの身に雷が落ちたように閃光が走る、そして再び幸一がイレーナを視界にとらえると彼女の右手には白を基調とした170cmくらいの大きさで独特な形状をした槍をもっていた。
 さらにイレーナは白いオーラのようなものを纏っていた。

「あのオーラが魔法の力です、やっぱりイレーナの力すごいです」

 ほめたたえるサラ、サラもイレーナの力の強さにはいつも驚いてばかりであった。

「そういえばどうやって戦えばいいんだ?」

「魔法を使いたい、そう強く願ってください。そうすれば頭に知らない言葉が浮かんでくるはずです。それを強い想いで詠唱するだけです」

「わかった」

 幸一は目をつぶり深呼吸をする。
 そしてサラの言葉の通り魔法を使いたいという願いを心の中で唱える、すると──。

(この言葉──、そういうことか!!)

 幸一の中に知っているはずはない詠唱のような言葉が脳裏に浮かぶ。
 頭の中ではその言葉が鮮明に理解していた。


(この言葉を叫べばいいんだな……)

 久遠なる世界の彼方から、混沌ある世界に閃光を貫き──、降臨せよ!!
 グローリアス・ソウル・エクスカリバー

 すると幸一の身体が光り始める。
 左手に自分の身体と同じくらいの大きさの剣が現れる。剣に青白い炎がまとわりついていてそれがとてつもない巨大な力を持っていることが幸一には理解していた。

「これが魔法の力……」

「そうです、それがあれば身体が魔力によって守られた状態になり攻撃を受けても出血をしない状態になります」

 これが魔法がこの世界に影響を与えた原因だった、これにより魔法を使える冒険者はこの世界に強い影響を与える存在となった。
 サラが説明をするとイレーナが自身の槍を幸一に向ける。そして──

「幸一君、行くよ!!」

 その言葉が試合開始の合図となる。
 試合開始と共にイレーナが一気に間合いを詰めていく、そして一気に槍を振り下ろす。
 幸一はそれに対応し受け止めようとするが……


「何つうパワーだこいつ、腕がしびれて感覚が消えたぞ!!」

 予想外のパワーに驚愕する、幸一は攻撃を受け切ったものの予想もしなかった力の強さに腕がしびれてしまった。

 これこそがイレーナの戦闘スタイルだった。
 女性であるという事を感じさせない攻撃的で力強さとパワーを前面に出した戦闘スタイル。

 一方的な試合が続く。幸一は剣術が元々使えていたこともあり何とか幸一がイレーナの攻撃をかわしていく。しかしあまりの強さに防戦一方、反撃の手段がない以上じり貧となってしまいそして──。

「ぐぁぁっ!!」

 とうとうイレーナが幸一の胴体を貫く有効打を入れる。
 転倒する幸一。ヒートアップする周囲の観客達。

「イレーナちゃん、頑張れ――!!」

「いけいけーー」

「やっちゃえ、イレーナ~~っ!!」

 イレーナはとどめをさすためさらに間合いを詰める、幸一はすぐに立ち上がり応戦する。


 イレーナの攻撃を何とか防ぎながら幸一は何とか反撃の機会をうかがおうとする。しかし──。

(まずいな……、まるでスキが無い)

 力任せだが槍の使い方を心得ているようでスキがまるでない。
 周りはイレーナを応援する声であふれかえり完全にアウェーな状況になっていた。


 一方イレーナはというと……。

 盛り上がる自身への応援と同時にイレーナは妙な違和感が脳裏によぎる。

(何? この感じ……、おかしい──)

 誰がどう見てもイレーナが圧倒的に押している状態である、しかし幸一は押されながらも決定打を許さず寸前の所で対応してしまう。

 決定打を与えられずにイレーナはもどかしさを感じ始める。

(うぅ……、でも罠かもしれないし──)

「力は強いがなかなかスキを作らない、やはり腕はあるようだな……」

 イレーナはパワーがあるものの決して力任せに行くだけの猪武者ではない、相手の動きから戦略や作戦を読むことも駆け引きを討つこともできる。イレーナは幸一が何かを狙っているような気配を感じ深追いはしなかった。しかし──

「そ れ で も 、 行 く し か な い ! ! 」

 勝つためにはどこかで責めなくてはいけない、リスクのない賭けなんて存在しない。だったら攻勢に出ている今しかない。

 そう考え槍に魔力を込めて一気に突きを見舞う。
 すると──。

(いける!!)

 幸一は待っていた、イレーナが攻撃に前へ出るのを。まだ実戦経験が無い幸一では正攻法ではイレーナに敗北は必至だという事を理解していた。

 しかしその中で勝利を得なければいけない、そんな幸一がとった方法が弱者が強者を討ちとる手段、カウンターである。

 こっちが守りに入れば押しているイレーナはどこかで前がかりになるはず、その一瞬に幸一は賭けたのであった。

 そして一気に前へ出ると前がかりで無防備となっていたイレーナに向ってエクスカリバー
 を振りかざす。前がかりになっていたイレーナはこの攻撃を防ぐことができず直撃、五メートルほど吹き飛ぶ。
 ざわめく周り──。


「すごい……」

「あれが炎の唯一王──。イレーナさんが負けちゃったの?」

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