8、え? 暗黒破壊神もういるの?
「リージェ様? 大丈夫ですか?」
ステータスへのツッコミに夢中になってたら、心配そうにルシアちゃんが覗き込んできた。
ので、俺は大丈夫だ、という事を伝えるために首をコクコクと縦に振る。
「無事にレベルアップできましたか?」
「!」
再度コクコクと首を振る。ルシアちゃんの話を最後まで聞かずに燃やしてしまったが、合っていたようだ。
「先ほどの甕には、スカラファッジオが入っておりました。先代のディオ・リジェロ様が好んで召し上がっておられたのですが、リージェ様はお召しにならないようでしたので」
「食べるかあんなもん!」
「ならばリージェ様がより強く成長するための糧になれば、と」
ルシアちゃんがニコリと笑う。そっか。ルシアちゃんがアレを食べるわけじゃなかったんだな。良かった。
つか先代ってもしかして、俺の親? あれが主食とか、どんだけ悪食なの?
「リージェ様、私の言葉を理解されておりますよね?」
ルシアちゃんが確信めいた聞き方をする。当然、何を言っているかはわかるので首を縦に振る。
ホッとしたような笑顔が凄く可愛い。
「では、場所を移して少しお話を致しましょうか」
ルシアちゃんに抱っこされて、寝室へと戻る。ルシアちゃんはベッドに腰かけると、1冊の絵本を取り出した。
可愛らしい声で読み上げられるその本は、この世界の成り立ちを綴った神話でもあった。
この世界を創ったのは、一対の男神と女神だった。
二人はまず一つの大きな土地を造り、その上にどんどん様々な生物を創り出した。
しかし、棲むものが雑多になれば争いが生まれる。
神はそこでそれぞれ祝福を与えた。
男神は大切な者を守るための戦う力を。女神は大切な者の命を守るための傷や病を癒す力を。
長い年月を経て、いつしか生物は癒しの力ばかり求め女神ばかりを信仰するようになる。
光が強まれば闇もまた強くなるというもの。
元々は同じ役割、対等な関係であったのに見向きもされなくなった男神は黒く染まる。
そうして、女神が創ったものを壊すための生き物を次々と創った。
それがモンスターの誕生であり、男神が暗黒破壊神となった瞬間であった。
「! 暗黒破壊神、だと!?」
暗黒破壊神と女神の力は同等。決着はつかず多くの命が失われた。
そこで女神は異なる世界より力ある者を召喚し、長い戦いの果てに暗黒破壊神を滅ぼした。
しかし、彼は一定の周期で復活し、世界を滅ぼさんとする。
そこで女神が授けたのが、勇者召喚の魔法と、世界を守護する聖なる竜。
「何故この話をするかと言いますと、今がその暗黒破壊神の復活する年なのです」
あ、ごめん。それ俺だわ。
そうか、俺の役目はこの世界を壊す事か。
でもそうするとルシアちゃんも殺すことになるのかな? 気が進まないなぁ。
「勇者と聖女、聖竜が揃わなければ、暗黒破壊神と闘うことはできません。そして、半年前、勇者を探しに行った聖竜と先代の聖女が暗黒破壊神に倒されてしまったのです」
「…………は?」
え? 暗黒破壊神もういるの? 許せん!
「誰だそいつは! 俺様の名を騙る偽者など、俺様が倒してくれよう! 俺様こそが本物の暗黒破壊神なのだー!!」
俺は途中から興奮してそう叫んだので、その間も何かルシアちゃんが言っていたがほぼ聞いていなかった。
「――から、共に強くなりましょうね、リージェ様」
「おう!」
俺は強くなるぞ! 今暗黒破壊神を名乗る不届き者を倒し、真の暗黒破壊神が誰かを世に知らしめるのだ!!
メラメラと野望に燃える俺。また一つ目標ができてしまったな。いや、やることは変わらないか。強くなる。今よりももっともっと。
その後は食料確保も兼ねてメロン狩り。経験値を稼ぐために、わざとモンスター化させる方針をルシアちゃんが言い出した。強くなりたい俺に異論はない。
因みに、あの巨大な芋虫もたまに畑にいた。
衝撃だったのは、メロンはモンスターだが、芋虫もゴキも普通の生き物らしい。
あの巨大さで普通の生き物とか。仰々しい名前は何なんだ。
因みに、普通の生き物でも倒せば経験値にはなる。が、レベルが上がったからか、最初5貰っていた芋虫は、今はいくら倒しても1しか入らなくなった。
メロンも最初にルシアちゃんを助けるときに倒した時は経験値10だったが、レベルが上がったからか5しか入らなかった。
いくら成長が早いとはいえ、そうそうモンスター化するものはなく。今日はレベルアップは叶わなかった。
因みに現在のステータスはこんな感じ。
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【ステータス】
名前 : リージェ
レベル : 8
EXP : 1016/1280
HP : 90/580
MP : 10/219
Atk : 2034
Def : 642
スキル : タリ―語 Lv.1
我が劫火に焼かれよLv.3
称号 : 中二病(笑)
害虫キラー