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プロローグ

「あの、すみません。お伺いしたいことがあるんですが……」

「――――?」

「は、はい?」

「――――?」

「日本語は通じないのかなぁ……えーと、エクスキューズミー……?」

「――――っ!!」

「うわっ! いや、あの、ごめんなさいっ!! うぅ、英語も通じないのかよ……というか、なんて言ってるか全然分からない……って、その手に持ってる木の棒でどうするつもり……ですか……?」

「――――っ! ――――っ!!!」

「いてっ?! ぼ、暴力はいけませんよっ?! ちょっと誰か……」




「誰か通訳の人呼んできてえぇぇぇぇええ!!」



 
 街のど真ん中で、黒いスーツに身を包んだ彼は雲一つないその晴天な空に届いてしまうほど、どデカイ声で悲痛な叫びを上げた。

 だが、彼の叫びは誰かに届くばかりか理解もされず、目の前の中年の男に謎の言語で怒鳴り散らされながら木の棒を振り回され、彼は逃げ回るのであった。



 ここは日本でもなければ、皆様が住んでいる世界でも無い。

 そう、ここは、あらゆる言語も通じなければ、衣食住という文化も全くの別物で「異文化」だけでは言い表すことのできない「異世界」なのだ。


 元いた世界と全く違う世界なのに最初から言語が通じる? そんなものはこの男から言わせてみればとんだ御都合主義な話だ。


 この物語は、主人公に最強のチート能力が無ければ、SSSランクの冒険者でもない、そればかりか街の住人に言語も通じない。そんな世界で必死に奮闘し生き抜く「サバイバル冒険譚」である。

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