16
パパが作ってくれた料理は、コロッケだった。
外がサクサクで、中はホクホク。
美味しかった。
ママも美味しいって言ってる。
だけど、その表情は寂しげで悲しげだった。
ママは、涙を流しながらコロッケを食べていた。
「ママ、どうして泣いているの?」
「静どうしたんだい?」
「なんでもないの……
なんでもない……なんでもないの……」
ママは、ボロボロと涙をこぼした。
「そっか……」
パパは、ママの傍に座るとママの体を抱きしめ。
そして、ママの頭を優しく撫でた。
ママの涙は、止まる事はなかった。
パパは、優しくママを包み込み。
優しく撫でた。
私は、何も言えない。
何も言えなかった。
私は、ただその2人を見ているしか出来なかった。
スプーンで、コロッケをすくった。
それを口に運ぶ。
美味しい。
私の心の中の鐘が、鳴った。
パパもママの顔に笑顔が戻る。
このまま笑顔が戻るんだと思っていた。
だけど、現実は私には優しくはなかった。