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 ――馬神コーポレーション自社ビル

「誰かと思えば……
 この気配。
 坊ちゃまではありませんか」

 そういって焔の前に現れたのは森夜の秘書のロビンだ。

「ロビンさん。
 親父に会いたいんだ」

「社長は今、会議中です」

「終わるまで待つ」

「そうですか。
 では、ドールから降りてください。
 案内します」

 ロビンがそういうと焔はドールを解除して地面に足をつけた。

「いいのか?」

 焔が尋ねる。

「子が親に会うのに理由はいりませんから」

 ロビンは、そういって優しく笑う。

「ありがとう」

 焔が笑う。

「にしても、あの稲妻で死ななかったのですね。
 流石です」

「ああ。
 カリュドーンの猪だっけ?
 そのときは奈良にいて無事だったんだ」

「奈良ですか?」

「うん。
 今は、パンドラ艦に世話になっている」

「民間傭兵ギルドですか。
 社長もお喜びになりますね」

「そうか?」

「なにより坊ちゃまが社長にお会いになるってだけで嬉しいはずですよ?」

 ロビンがそういってビルのドアを開ける。

「でも、流石だな……
 この火の海で傷一つついていないもんなこのビル」

「そうですね。
 馬神コーポレーションの自社ビルはパンドラ艦などの要塞戦艦に負けない装甲と機動力を持っていますから」

 馬神コーポレーションの自社ビルは動くビル。
 特殊な素材で出来ていて核ミサイルにさえ耐えれる強度を誇る。
 そして、地球を一周できるエネルギーと機動力を持っている。
 馬神コーポレーションのビル自体が特殊なドールだと思ってもいいだろう。



「社長、坊ちゃまが来社になられました」

 ロビンがそういって社長室の扉を開ける。

「ロビン、会議中だぞ?」

 そう言ったのはロビンの双子の弟のクリスである。

「構わない」

 森夜がそういって焔の方を見る。

「親父。
 俺のドールを強くしてくれ」

 焔が森夜の方を見る。

「昨日今日ドールを手に入れたものがなにを言っている。
 ドールを急に強くすると身体に負担がかかる。
 だから、パイロットである本人が強くならないことには……な?」

「だったら俺を強くしてくれ……
 時間がない」

「なにを焦っている?」

「テオスが攻めてきているんだ。
 黙って殺されるなんて嫌なんだ」

「……はて。
 ご子息はなにか勘違いされているようで」

 道長がそういって小さく笑う。

「勘違い?」

「殺されたくないのなら強くなればいい。
 そんな簡単なものではないのだよ。
 戦争というものは」

 森夜がため息混じりにそういった。

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