バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

7 大切な人

 咲祭当日…開始の放送とともに、賑やかな声が廊下や教室で聞こえた。各教室ではお化け屋敷やクレープの店など出していた。そういえば、うちの中学は屋台とか出し物とかが凄いって有名になってたな…
「佐倉〜!風邪大丈夫?昨日は忙しくてお見舞い行けなくてごめんね!」
「ううん、大丈夫!お見舞いにきてくれた人はいたから…」
「それってもしかして…蓮くん?」
「うん…それで、一緒にダンス踊ろうって逆に誘われた…」
これぐらいは…話しても大丈夫だよね?百瀬さんの告白のことは黙っておこう…
「へぇ〜そっか〜!へぇ〜!!そういうことね…あんたもやるじゃない」
なんか…凄い明るい声になってない?
「それってどういう…」
「あ、仕事あるの忘れてた!じゃあまた後で!…頑張れ!」
きっとダンスのことだよね?応援に応えないと…
 一日目は生徒だけで…二日目は校外の人が来る、三年間やってきてるけど、なかなかハードだな…
「佐倉…!」
「蓮くん…」
「その、委員会の仕事で集まりがあるから、一緒に行こう」
「うん!」
 渡り廊下を歩いていると、なんか周りがまたザワザワしていた。それで…周りから聞こえてきたのは、あの二人、付き合ってるのかな?とか、お似合いだね…とか…嬉しいから、いっか!
 委員会の集まりが終わると、各自、受付とか、手伝いとかに言ってしまった。
「私たちもクラスの手伝いしに行こうか」
「そうだね」
 一日目は、自由時間もあったが、委員会の仕事でほとんど潰れてしまった…その分二日目に自由時間が、あるから、明日楽しもう。
 そして二日目…一般の人が来てさらに賑やかになった。うちの学校は態度が良くて一般の人が来てもマナー良く対応できるから、という理由で一般公開されている…もっとしっかりしなきゃ!
「佐倉〜!一緒に回ったりしない?」
「いいよ!茜の好きなところ行こうよ!その〜…色々手伝ってくれたお礼として…」
「わかった!」
 その後、美術部の展示品や、たこ焼きなど、食べたり、見て回った。そんなことをしていたらすぐに二日目も終盤になろうとしていた…咲祭ってこんなに早く終わったっけ!?楽しみすぎて早く終わっちゃったよ!あ…そういえば。
「茜、後の片付けとか任せちゃってもいいかな?」
「うん!これからが…勝負だよ!」
「頑張る!」
 というか…蓮くんどこにいるの!?探してるのに見つからない…このままじゃダンス始まっちゃう…
「いた!佐倉…!」
「蓮くん!!」
 よかった、蓮くんも探してくれてたんだ。
「その…蓮くん…屋上には行かなくて…いいの?」
「…うん、行ったら、告白をオッケーすることになっちゃうからね。」
「そっか…」
本当にその気は無かったんだ…よかったけど、よかったけど…百瀬さん、悲しいんだろうな。
「あれ?蓮くん、ダンスの場所は校庭のキャンプファイヤーの周りだよ?そっちは誰もいない…」
「うん…それでいいんだよ…話があるんだ」
 そう言って、私たちは誰もいない教室に入った。もうすっかり暗くなってしまったので、蓮くんの顔は見えない…どんな顔をしているんだろう?何を話させるんだろう?
「佐倉…」
「はい…」
なんか緊張してきた…
「俺は…佐倉のことが…す…」
「うん…」
す…の次はなんだろう!?もしかして、好き…とかかな…ダメだ、期待しちゃいけない、期待した分、後悔が大きくなっちゃう。
「好きだ!俺と…付き合ってほしい!!!」
 その時の蓮くんの告白を彩るように、花火が上がった。ダンスが始まる合図の花火だ。その花火とともに映ったのは…あの時…花のような笑顔だ…
「佐倉!?どうして泣いているんだ!?」
あれ?なんでだろう…私…
「ごめん…泣くつもりなんてなかったんだけど…」
嬉しすぎて…なんて恥ずかしくて言えないよ…
「それで、返事…」
「うん…私も…私も好きでした!こちらこそ…よろしく…お願いしていいかな?」
 まるで夢のような時間だった。私たちは誰もいない教室で、両思いなのを確認するかのように踊った。ダンスの音楽が聞こえてきていたので、その音楽に合わせて踊った。心と体が震えてた。それは蓮くんもだった。
「佐倉…好きだよ」
好きと言われるだけで、顔が赤くなって、心がフワフワしてしまう。もう幸せすぎてどんな顔になっていることか…
「私も…蓮くんのこと、好き…」
 ダンスも終わり、私たちは疲れてしまったので、少し椅子に座って話すことにした。今までの会話とは全然違う、カップルの様な話を。
「それで、蓮くんは…どんなところが好きだったの…?」
自分から聞くのは恥ずかしすぎたけど、聞きたい気持ちのほうが大きかった。
「それは…笑ってるところとか…何にでも真剣なところとか…たまに見せるドジなところも好きだし…」
「も、もういいよ!」
いざ聞くと耐えられないよ…
「それで、佐倉は?」
「…私も、笑顔が好きだったり、誰にでも優しいし、あと、お見舞いとかもきてくれたし…それに…すこしおっちょこちょいで…って私と同じだね…えへへ」
「なんか…恥ずかしいな…」
「そうだね…」
 その後、お互いの連絡先を交換したり、高校はどこに行くのか、などと先のことを話したりした。
 こんなに幸せなことってあるだろうか。好きな人と、付き合えて、ダンスもできて、未来のことを考えて…もう幸せすぎる!
「とりあえず、教室戻ろっか」
「うん…」
 そして…教室に戻るときに、走って横切る百瀬さんの姿があった。その時に言われた。
「…めでとう」
 涙声で、すこし聞き取れなかったけど、おめでたう、と言ったのだろう…なんか…少し悪い気がしてしまう。このことを蓮くんに話したら。
「大丈夫…悪くないよ、あいつには、俺から話すから」
とても頼りになる一言だった。私の心配や不安を吹き飛ばしてくれる…蓮くんなら、蓮くんとなら…この先の人生が明るく変わるんだろうな…なんて、大げさすぎだよね!
 教室に戻ると茜が待っていた。
「ほら!片付け終わったし帰ろう!もう外真っ暗だね〜!」
「うん!」
「…うまくいったよかったね」
茜は蓮くんに聞こえないように小声で話した。また、涙が出そうだった…ここはこらえなきゃ…
 私たちの咲祭は色々なことがあったけど…ひとまずは無事終わりを迎えられた。私たちはこれからいろんなことがあるんだろうな…想像するだけでにやけてしまう…でも…これからは想像じゃなくて、ちゃんと会って、蓮くんとデートしたり、勉強会だって二人でできたり…!これから楽しみだな!!!

 私の学校生活に…花が咲いた。

しおり