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「フィサフィーも言ったか……」
モトフミが小さく唸る。
「余裕だな?」
灰児といずみが大鎌をモトフミに向ける。
「余裕さ……」
モトフミがゲルンガの方を見る。
「が……あ……」
ゲルンガが銀弾に苦しんでいる。
「莉奈。
お前の本当の名前は佐藤莉奈。
心優しい女の子だ」
「あ……あ……」
ゲルンガが唸る。
「くそ、ダメか……」
座来栖が目を閉じる。
「大丈夫。
諦めないで」
ボクが現れる。
ボクがそっとゲルンガに触れるとゲルンガの身体に纏われていた邪気が払われていく。
そして、美しい少女が姿を現す。
「……座来栖?」
ゲルンガの呪いが解けた。
「莉奈!よかった!」
座来栖が、ゲルンガと呼ばれて恐れられた少女莉奈を抱きしめる。
「……うむ。
残りは我ひとりか……」
モトフミは、ベルゼブブの方を見る。
「モトフミ……
我は主を許さない」
「仮初の世界……
この世でも王とはなれぬとはな」
「主に王の資格はない」
かみさまがそういってモトフミの顔に一撃浴びせた。
「流石は我が息子。
このバリアを無効化できるか……」
モトフミが、少し切ない顔をした。
「もう眠るがいい仮初の王よ」
モトフミが指を鳴らす。
するとモトフミの姿が光へと消える。
そして、戦いはあっけないほどあっさりと終わった。