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執事コンテストと亀裂㊸




真宮も夜月と同様、二人の男を相手にしていた。
「逃げないで正々堂々と戦おうぜ」
「それは鉄パイプを持っているお前が言えることかよ」
そのようなことを言いながら、真宮は相手の攻撃を避け腹に肘打ちを食らわす。
「うぅッ」
その強烈な攻撃を受けるが、相手はすぐに立ち上がった。
「いってぇな・・・」
いつもはここで負けを認めるのだが、男は再び真宮に向かって飛びかかってくる。
「今日はいつもより、根性があるんだな!」
「・・・もし俺たちが勝ったとしても、警察には言うんじゃねぇぞ」
「あぁ、もちろんさ。 警察に言った方が、本当の負けな」
真宮がそう言って軽く笑った瞬間、相手はもう一度殴りかかってきた。 だがその攻撃を避け、それと同時に足を振り上げて相手の腕に攻撃を食らわす。
すると男はその衝撃により鉄パイプを手放し、真宮はすぐさまそれを拾って遠くへ放り投げた。
「ここからは、素手で勝負ってことで」
だがここで、あることに気が付く。

―――・・・あれ? 
―――そういや俺って、二人を相手していたんだよな。 
―――あと一人はどこへ行った?

相手が起き上がるのを待っている間、辺りを見回してもう一人の相手を捜す。 その瞬間――――
―――・・・ッ!
真宮はある人物らを発見した。 その人物らを見て、身体が固まり動けなくなる。

―――どうして・・・藍梨さんと伊達が、こんなところにいるんだよ!

そう――――公園の入り口付近に、藍梨と伊達がこちらを見ながら真宮と同様固まっている姿が目に入ったのだ。
だが彼らに気付いた時には既に遅く、赤眼虎の二人が藍梨たちの方へ走って向かっていた。
「ユイ!」
彼らを見て慌てて大きな声で結人の名を呼ぶ。 が――――彼はリーダーと戦闘中で、後ろを向けない状態らしく返事もこない。
「藍梨さんと伊達が!」
必要最低限の言葉で用件を伝えていく。 その瞬間――――
「・・・真宮!」
結人が真宮の名を呼んだ。 その言葉に込められている意味を、真宮は当然のように汲み取る。

―――分かっている。
―――ここは一番近い、俺が行けってことだろ。

だが当然既に遅いため、藍梨と伊達はとっくに赤眼虎の二人に囲まれていた。 助けに行くにはもう一人必要だと思い、隣にいる夜月に声をかける。
「夜月!」
「あぁ、俺も行く!」
そう言って夜月は思い切り最後の一撃を食らわせ、相手を無力化した。
「真宮! ソイツらは俺らに任せて!」
藍梨たちのことに気付いたのか、近くにいる二人組の優とコウが真宮たちのことを見ながらそう口にする。
ソイツらというのは当然、真宮と夜月が相手にしていた赤眼虎のことだ。
「任せたぞ!」
優たちに彼らを任せ、二人は全力で走って藍梨たちのもとへと急いだ。

「俺は藍梨さんのところへ行く! 夜月は伊達のところへ!」
「了解!」
そして真宮は藍梨を捕まえている赤眼虎を目の前にし、相手に跳び蹴りを入れて彼女を解放させた。
「・・・あ、真宮くん!」
「話は後でな」
相手が藍梨を手放して崩れ落ちたのを確認し、念のためにもう一度一発食らわす。
「藍梨さんこっち!」
真宮は藍梨の腕を掴み、倉庫の方へと走って向かった。
―――確か、あそこには裏口があるって言っていたよな。
そう思い、彼女を連れて倉庫の裏まで足を運んだ。
―――あった!
目的である場所を発見するとポケットから倉庫の鍵を取り出し、小さな鍵を手に取ってドアノブに差し込む。
―ガチャ。
「藍梨さん、入って」
藍梨が中へ入ったのを確認し、真宮は落ち着いた口調で彼女に向かって言葉を紡いだ。
「俺が『いい』って言うまでここにいてくれるか? 鍵は藍梨さんのことが心配だからかけておく。 アイツらが追ってくることはないと思うけど、もし何かあったら連絡して」
「・・・分かった」
そう発した言葉に藍梨が頷くのを確認し、真宮は倉庫から出て鍵を閉める。 そして再びまだみんながいる、公園へと走って向かった。


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