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ふんわりふわふわ空の色。
あまーいあまーい雲の味。
世界は優しい?
世間は悲しい?
ゆるーりゆるゆる風の音。
ピノはぼんやりと空を見る。
「ピノ?どうした?」
灰児が心配そうに声をかける。
「今、ものすごく強い魔力を感じるの」
「ああ。でも、この感覚は……」
「ボクのだよね」
「ああ。アイツは強くなるぜ?」
「うん」
ピノが小さくうなずく。
「どうした?」
「ボクが強くなったらピノ必要なくなるかな?」
「なんでだ?」
「ボクはピノを殺すことで強さを得れるの」
「あー。そういうこともうボクの前で言うなよ?
アイツはアイツでそういうの傷つくからな」
「うん。わかっているの。
ピノは、嬉しいの。
ボクが強さよりピノを選んでくれたことに感謝してる」
「ああ。だったら――」
灰児が何かを言いかけたとき。
プレゲトン、タナトス、レテが現れる。
「だったら簡単!
ボクの童貞を奪えばいいのよ!」
プレゲトンがビシっとピノに指をさす。
「童貞?」
「そう!ボクのはじめてのセックスを奪うの!」
「そしたらボクしあわせになる?
ボクの役に立てる?
ボクの一番になれる?」
「もちろんよ!」
プレゲトンが胸を張って笑う。
「灰児ホント?」
ピノが灰児に尋ねる。
「まぁ、そうだな」
「じゃ、私ボクのはじめてを貰う!
そして、お嫁さんになる!」
「マジか?」
灰児が驚く。
「だったら作戦ね!
作戦名は!ピノの花嫁修業大作戦!ね!」
プレゲトンが嬉しそうに声を出した。