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――静かなる夜。
ボクは、神経を研ぎすませていた。
ここ数日いろんなことがあり忘れていた精神統一の鍛錬をすることにした。
すっと布が落ちるように老人が現れる。
「久しいのボク」
ボクは、驚かない。
「軍鶏爺?」
「みんな大好き軍鶏爺じゃよ」
ボクは小さくうなずくと神経を集中させた。
「相変わらず魔力は低いのにキャパシティは高いの。
すでに魔人かそれ以上じゃぞ?」
軍鶏爺の言葉にボクは気を良くしたのかさらに魔力をあげる。
「お?魔力が倍以上になったぞ!
凄いな」
ボクは、小さく笑う。
「倍以上って言っても1が3になったようなものですよ」
「それでも3倍になったことになる」
軍鶏爺も笑う。
「で、そちらの女性は?」
ボクは軍鶏爺の近くにいた女性の方を見る。
すると新一が遅れてやってくる。
「この子が、以前合わせたいと言っていた人だよ。
ボクくんの呪いについてわかると思っていたんだけど。
もう呪いは解けちゃったね」
新一が小さく笑う。
「うん、でもボクは弱い」
ボクが小さくうなずく。
「そやな。
アンタは人以下どころか犬以下魔力や。
犬ってなスライムよりも基礎魔力はないねんで?」
「うん」
関西弁で少女のきつい言葉にボクは腹が立たない。
言われなくてもわかっているし。
今はそれを受け止めれる。
「でもな。
犬でも魔獣になったやつもおる。
名前をアスペルガー」
「うん」
「知ってるよな?」
「うん」
「自己紹介遅れたな。
ウチの名前はハデス。
魔獣ハデス。獣耳のかわいいハデス。
今はケチな商人をやってるねん」
「商人さん?」
ボクは首を傾げた。
「はい。
そして、ハデスさんの後ろにいるのが……」
「私、サーチャーと申します」
機械で出来た小さな生命体の機械獣が挨拶をした。
「この子便利やねん。
なんでも出来るねん」
「私の説明は……」
サーチャーがそういうと目を赤く光らせた。
そしてモニターが映し出される。
色んな情報がボクの視界に映る。
不思議と理解できた。
「なんでも大図鑑のサーチャーやー」
ハデスのその言葉のあとにサーチャーが嬉しそうに言葉を放つ。
「やー」
ボクはちょっとサーチャーがかわいいと思った。