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御子柴からユイへの想い⑱




それからしばらく北野が日向の手当てをしていると――――残りの仲間が戻ってきた。
「おーい、御子紫ー! 待たせたなー!」
「椎野・・・?」
椎野と夜月だ。 結人は二人の事情を知っているため笑顔で迎えた。
「おう。 二人共意外と早かったな」
「夜月、それ何を持ってんだよ?」
夜月は今、自分の学校用のバッグともう一つあまり見慣れない袋を持っている。 そのことに未来はいち早く気付いた。
「ユイに探してくるよう頼まれたんだよ。 御子紫の教科書と体操服をさ」
「え、どこにあったんだ?」
「体育館倉庫だよ」
「体育館倉庫!?」

結人は再び説明をした。 一言で言うと、小説に書いてあったのだ。 “いじめっ子たちは主人公の物を全て体育館倉庫に隠していた”と。
日向は体育委員に入っているということは予め御子紫から聞いていた。 だから彼は簡単に体育館倉庫を出入りすることができたのだろう。
だがどこに隠されているのかまでは分からなかったため、椎野一人だけでは大変だと思い夜月と一緒に探すよう頼んだ。 この頼みも真宮と同様メモに書いて手渡し、彼らに伝えたのだ。 
どうして直接言って頼まなかったのかというと、日向に会話を聞かれたくなかったから。 それだけのことだった。

―――まぁとりあえず、無事に見つかったみたいでよかった。
仲間の頑張りに結人は一人感心する。
「跳び箱の中に隠されていたから、探すのには苦労したぜー」
「え、マジで!? そんなところに隠してあったのか・・・」
―――跳び箱の中に隠したという発想は思い付かなかったわ。 
―――本当によく見つけ出してくれたな。

「日向、お前完敗だな」

北野に手当てをしてもらい少しまともな姿になった日向を見て、未来は嬉しそうにニヤリと笑う。 彼はなおも地面に座り込んだまま怯えるように言った。
「・・・お前たちは、一体何なんだよ」
「「「・・・」」」
その質問に結人たちは皆一様に黙り込む。 誰も答える者がおらず、かといって答えないのも気分が悪いため、結人がこの場の代表として答えてあげた。

「いや別に、そんなに大したものじゃないって。 まぁ、強いて言うなら・・・。 他の奴らとは比べものにならないくらいに団結力が強い、ただの高校生さ」





その後――――結人たちが立ち去ると日向はただ一人その場に取り残された。 

「・・・色折、憶えていろよ。 お前のこと、絶対に許さねぇからな」

その思いを荒く吐き捨て、日向もその場から姿を消した。


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