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朝が来る。
なにもないようなありふれた朝が……
ボクが目を覚ますと紅鮭はベッドにいなかった。
キッチンで料理を作っている。
「あ、起きた?」
紅鮭が笑顔を見せる。
「えっと……」
ボクは、何か言葉を探す。
「おはよう」
紅鮭がそういうとボクも挨拶を返す。
「おはよう」
「よく眠れたかな?」
「うん」
ボクは照れる。
「どうしたの?」
「えっと、あんまり覚えてないんだけどキスした?」
「え?もしかしてはじめてだった?」
紅鮭が申し訳なさそうにボクの方を見る。
「うん」
「あー、ごめんね」
「うんん」
ボクの顔は赤くなる。
「えー、そんなに照れるもの?」
「照れないものなの?」
ボクは少し自信をなくす。
「どうんだろうね。
んー、まぁファーストキスは照れるよね。
でも、このキスは照れなくていいキスだよ?」
「え?」
紅鮭の言葉にボクは戸惑う。
「私のキスは、攻撃みたいなものだから」
「攻撃?」
「うん。
私はキスをした人を眠らすの力があるの」
「へ?」
「だから、攻撃。
キスも楽しめない身体なの」
「キスは知らないんだ」
「そっか」
「楽しむものなの?」
「どうんなんだろうね」
紅鮭は言葉を濁す。
「僕、女の子のことなにも知らないんだ」
「そっか」
「うん」
紅鮭は少し目を閉じる。
「あ……」
「どうしたの?」
「パン、焦げちゃった」
紅鮭が、そういって焦げたパンをボクに見せる。
「紅鮭さんって朝はトースト派なの?」
「あ、それよく言われるんだけど私はトースト派だよ?
名前が紅鮭だからご飯に鮭と思う人たくさんいるね」
「うん、僕もそう思った」
「パン、焼き直すね」
「うんん、食べよう。
もったいない」
ボクはそういってパンをつまみ口に運ぶ。
「え?苦くない?」
「苦いね」
「焼き直すよ?」
「うんん」
ボクは、奴隷生活のとき。
食べ物が食べれない日もあった。
それ故に、食べ物の大事さは身についている。
「食べ物って大事だから」
ボクはそういってパンをかじる。
「うん」
紅鮭もパンをかじる。
焦げたパンは苦く。
パサパサだった。