44
「私は、認めないわよ!
こんな子どもが私の使い手だなんて!」
女の子の声が、廊下まで響く。
それを聞いた一花が慌てて部屋に入る。
「プレゲトン!大きな声を出してどうしたの?」
一花の姿を見た少女の目は炎のように赤かった。
「一花!聞いて!ジョーカーのやつこの子が新しい相棒だというのよ?」
「適正の結果が出たのか?」
アザゼルが、部屋にいた研究員に尋ねる。
「はい、この少年……
いえ、亜金くんはプレゲトンとの初回適性率は78.9%でした。
この数値は、十分適正の範囲かと」
その研究員に怒鳴る。
「ダメ!私は認めないわ!」
「今怒鳴っている少女の名前はプレゲトン。
炎の河という別名を持つ伝説の剣のひとつじゃ」
アザゼルが、ボクにそういった。
「なに?その子……」
「ボクの名前は、鋼 ボクです」
ボクは、小さな声で自己紹介した。
「そういうのを聞いたんじゃないけどね。
まぁ、いいわ。ボク。
貴方も私に用があるの?」
「いや、ボクが用があるのは亜金くんなんだけど」
ボクがそういって、亜金の方を見る。
亜金はなにかを思い出そうとしているようだが思い出せないという感じだった。
「亜金に?」
「うん」
「亜金のこと知っているの?
知っているのなら早く家族のところに返して!」
プレゲトンが怒鳴る。
「わかんない」
「ん?どういうこと?」
ボクは、自分の身に起きたことと亜金の情報を話した。
「んー
つまり、フィサフィーに全てを奪われたのね」
プレゲトンが、そういって亜金の方を見た。
「そっか。
僕にも家族がいたんだ……」
亜金が小さく笑う。
「はぁ。仕方がないわね。
私が、亜金のお姉さんになってあげるわ」
「え?」
亜金が驚く。
「なによ?」
「僕の方が歳上っぽくない?」
「実年齢は、私のほうが上よ?」
「そうなんだ?」
「私、こう見えて1000歳は超えているから」
プレゲトンが、そういって胸を張る。
胸が揺れる。
「うむ。
じゃ、一件落着じゃな?」
アザゼルがそういうとプレゲトンが言った。
「相棒になるけど一緒に寝ないわよ?」
「寝る?一緒に?」
亜金が首をかしげる。
「そうよ?」
「手を繋いで?」
亜金の言葉にプレゲトンが少しイラつく。
「はぁ?なにを言って――」
そこまで言ったとき今度はにやりと笑う。
「もしかして亜金童貞?」
プレゲトンの言葉にはいろんな悪意があるのがボクにでもわかった。
「童貞……?」
「そうなのね……
じゃ、いいわよ?手を繋いで寝てあげる。
10000人殺したらエッチもしてあげるわ」
「殺す……?」
亜金の表情が暗くなる。
「何か不満でも?」
プレゲトンがそういうと亜金がうなずく。
「じゃ、僕は君とエッチしない代わりに誰も殺さない」
「言うじゃない?でも、一度経験したらまたしたくなるわよ。
男ってそういう生き物だから」
プレゲトンの言葉は、どこか淋しげだった。