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人の温もりを知ったボクは、少しだけ強くなれた気がした。
「アザゼルさま」
ひとりの女性が、すっと現れる。
「む?一花か?どうした?」
「亜金と名乗る少年を保護しました」
「え?亜金?」
ボクが驚く。
「知り合いか?」
「あ、はい。
孤児院にいた友だちです」
「そうなの?
よかった……彼、記憶を失っていて」
「え?記憶を?」
ボクは首を傾げる。
「ええ、あの光に当てられたみたいで……」
「そうか……」
アザゼルが、髭を撫でる。
「それで、恐らくですが……
プレゲトンの適性が見られるようで」
「それは、誠か?」
アザゼルが、細い目をぐっと大きく広げる。
「はい」
「わかった。
今向かう。
ボクも来るか?」
アザゼルがボクに尋ねるとボクはうなずいた。
亜金が無事ということは、ほかの人も無事かもしれない。
そう思うと心が少しだけ楽になった。
「ほかに誰かいませんでしたか?」
ボクが尋ねると一花が首を横に振った。
「その場にいたのは彼だけなの」
「そう……ですか」
でも、きっと無事な人はいる。
みんな強いから……
そんな自信がどこからかあふれた。