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ボクが次に目を開けたとき。
飛び込んできた場所。
それは、綺麗な花畑だった。
「ここは?」
ボクが、イリアに尋ねる。
イリアが小さく笑う。
「ここはアンゲロスの街がある場所」
「アンゲロスって天使?」
「そう、天使だよ。
でも、安心してアンゲロスは咎人とか人間とかの差別はしないから」
「そうなの?
もうここまできたら信じるしかできないけど」
「うん。
大丈夫。
妖精族の私にも優しくしてくれるところだから」
「そっか。
イリアさんは、どうしてフィサフィーに捕まったの?
この移動術が使えるのなら逃げれたんじゃ……?」
「うん。
実力で負けたし、魔法も封じられたから拘束されてしまったの」
「あ、そっか。
怪我はない?」
「うん、大丈夫」
イリアが小さく笑う。
「この魔力!イリアか!」
その声とともに男の声が響く。
それと同時にボクの身体が吹き飛ぶ。
「え?兄さま!?ちょっと待って!」
イリアがその男を止めようとしたが男は止まらない。
男の顔はわからない。
顔は覆面で隠れている。
「バリアで攻撃を防ぐとはやるでは無いか!
しかも、無傷!!」
覆面の男の声が嬉しそうだ。
「し、心臓が止まるかと思った」
ボクは、険しい顔でそういった。
「止まってしまえばよかったのにな!」
「待って!兄さま違う!
その人は!」
「待ったなしだ!」
覆面の男は、そういって手に魔力を込める。
「だーかーらー!」
イリアがボクの体の前に立ちふさがる。
「イリア……?まさかその男に惚れたのか?
惚れた心の隙きを狙うとは……
許しがたきテオスの手先!」
覆面の男が、空高くジャンプした。
そして、ボクの背後にまわるとそのまま蹴り上げる。
ボクのバリアはまだ健在だった。
「僕は……テオスじゃない!」
ボクは、バリアを手に集中させて覆面の男にぶつける。
しかし、覆面の男はそのバリアを破壊する。
「じゃ、何だというのだ?」
「僕は……鋼 ボク!」
「鋼ボクか……
心に刻んだ!そして死ね!」
覆面の男が、新しく貼られたボクのバリアを破壊する。
「く……歩法・逃の型!」
ボクが足を小さく刻む。
「モスマン流奥義!」
モスマンも手に魔力を込める。
「静まれい!」
そういって老人が現れる。
そして、ボクと覆面の男の頭の上に水が当てられる。
「アザゼル殿!止めてくれるな!
ボクという男は、テオスなのですぞ!」
「落ち着くのじゃ!モスマンの王!
ボクはテオスではない咎人じゃ。
つまり人間なのじゃ」
「む?」
モスマンは、目に魔力を込めてボクの方を見て魔力を測る。
そして、両手を下ろし魔力をといた。
「ボクも、魔力を解いてくれるか?」
老人の言葉にボクは静かに従った。