第12話
「あれ? もう終わっちゃいました、そっち」
「とっくに、な! ちんたらしてんじゃないよ!」
マムシは怒鳴る。百を越えていたであろう小鬼の群れは、一匹残らず斬り倒されていた。
林太郎が人狼を
坊主と医者––––
「だいたい、こんな小者何匹かかってこようと、俺さまにかすり傷ひとつ負わせれないから。もっと、どーんと大物出てこいつーの」
のど仏が見えるほど、
––––と、その時、
––––ドゴゴゴゴゴゴーンッ!
大地が揺れた。
地面が大きく震え、足下の小石を
地の底からどよもすような振動は、すぐに突き上げる衝撃へと変わった。
––––バキバキバキバキバキバキッ!
マムシと
轟音をあげて
「フンガァァァァァァァ!」
耳をつんざき、胃の
人の
奈良の大仏が立ちあがったような巨体。
だが、けわしいその顔と筋肉が隆起した体は、まるで仁王像のようであった。
「フンガァァァァァァァ!」
再び
「……本当に出てくるなよ、デカブツ」
マムシは吐き捨てる。
たじろぎつつも、二刀を握る手に力を込めて巨人に斬りかからんと踏み出した、その時––––
「ほげっ!」
彼は後頭部に衝撃を受けて、
つんのめるマムシ。と、その顔に向って、上空から何が勢いよく飛んできた。
「ふんがっ!」
まともに顔面で受け止めたのは、子どもほどの大きさもある熊のぬいぐるみであった。
「うらららららぁー!」
マムシの頭上高くで、少女の声が響いた。
「ショウちゃん!」
のけぞるマムシに代わって、林太郎が声の主の名を呼ぶ。
––––もし、
それほどまでに、いままで以上に信じられない事が展開されていた。