第7話
「ギャギャ!」
小鬼の顔面に
––––だが、
「……え? 何、いまの速さ……」
不意を突かれた。反応が遅れた。「しまった!」と思ったその時––––右手はすでに振り抜けていた。
––––刀が勝手に動いた。
金之助にはそう感じずにはいられなかった。
「ウギギギギーッ!」
得物を失ってはもはやなす術なく、小鬼はその皮と骨のみの老木のような腕を頭の上で交差し、首をすくめ、両目を強くつむり、来るべき次撃に備えた。
「ギャギャ?」
小鬼はおそるおそる片目を開ける。目の前の人間は、大きく揺れていた。
無防備にも刀をにぎる両手をたらし、前に後に、右に左に身体をゆり動かしている。
小鬼はこの人間が、珍妙な動きで誘いこんだのち、斬りつけるのかと考えた。
「……ね、眠い」
ぼそりとつぶやき、半眼になったり、つむったりしている。
やがてぽろりと刀を二本とも取り落とすのを見て、小鬼は醜怪な顔面に喜悦が
「ギャギャギャギャギャギャ!」
黄ばんだ歯列をむき出し、勝利を確信した雄叫びを上げた。
どんな理由か何が原因かは知らない。
だが、いままさに、眼前の人間は立ったまま眠りに落ちつつあるのは事実だった。
首に喰らいついてやる、と膝を折りまげ力をたくわえ、いざ飛びかからんとした小鬼の頭に、何者かの影が落ちた。
「ギャギャギャー」
影の元を見上げ、
「うせろ、ザコ!」
影の持ち主が一喝する。野太い声音が、雷撃となって小鬼の頭頂から足の先までつらぬいた。
––––歴然とした、圧倒的な力量差。生物としての原初恐怖に、
「キャヒン! キャヒン!」
負犬の鳴き声に似た悲鳴をまき散らし、小鬼は四つんばいになって、
「もう……だめだ」
ほとんど失神するように、金之助は睡魔に眠りの沼に引きずり込まれた。ぐらっと、前方へ身を
「おっと」
金之助を散々